第6話部活とか恋愛とか、あと嘘とか秘密とか
俺が大学生活の多くをささげた演劇部にはあるルールがあった。
『部内恋愛推奨せず』
ようするにカップルつくんなよー(やんわり)、ということである。
やはり男女の仲というのはデリケートなものだったらしく、数年前このルールがなかった頃の演劇部は1度昼ドラを超える混沌な時代があったらしい(あんまり知らん)。というまあ先人の知恵ではないが、同じ轍を踏むなよということでこんなルールがあった。
なのに俺はちゃっかり付き合ってるやん、という話は置いとこう。
実際、カップルの存在が部全体の雰囲気を大きく左右するということは身に染みて理解した。
このルールあって良かったんじゃないかという先輩もいる。
だがしかし。この新しいルールが生まれたことによって、また新たな問題が浮上した。
嘘と秘密である。
「バレなきゃいいじゃん!」と呑気に語っていた奴らは総じて痛い目を見たはず。
部内恋愛がないんだから、あの子はきっとまだフリーだよね。
その勘違いは嘘と悲しみしか生まなかった!
きっとフリーだよね、とか思っていた童貞は真実を知って傷つき、あげく疑心暗鬼に陥る。
そんな童貞くんにデートに誘われた女性は、部の関係を悪化させまい!と考え嘘をつく、そして芽吹く罪悪感。
そして、童貞くんにデートに誘われた女性・・・・・・の、彼氏!。どうして童貞くんとご飯なんて行ったのかな?(部内の関係悪化について考えていた彼女の気持ちを、本当か?と疑う)。それによって発生する妬み。
自分の彼女が狙われているとか思ったら、そりゃ気が気でならんやろ。
部内恋愛推奨せず。
別にこのルールが悪いと言っているわけではない。むしろ改善しようとしている先輩たちの意図は充分に理解できる。
しかし、男女の問題を厄介にしてしまった感じはする。
部の女の子をご飯に誘う時は相手に彼氏がいるのかどうか慎重になるし、みんな黙って秘密にしてる分それを明かそうと必死になる奴らだっていた(そういう奴らにこそ、さっさと種明かししておくべきだった。マジックと同じように秘密がわかれば興味がなくなるものだったようだ)。
俺だって少しだがダメージを受けた。告白した相手に彼氏がいたのだ(もちろん部内の)。
いるなら、さっさといる!と言って欲しかった。そうすれば嘘で傷つく前に諦められた。
でもそれを言わせないのがあのルールだった。
・・・・・・・・・俺も嘘をついた。
「嘘なんてつかないよね」
あの時のとある友人の言葉が刺さる。
これはどう見ても裏切りだ。
裏切りは殺人よりも重い罪な時代が世界にはあった。その理由がよくわかる。
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