第2話 本編に入る前に小説の話
俺にとって執筆活動は最高の遊びだった。
はじめて小説を書いたのは小学四年生のころだった。
国語の授業で書けと言われたのだ。
長さは問われなかった。
でも俺だけ他のやつより原稿用紙の数が半端じゃなかったのを覚えている。
絵本にありそうなメルヘンチックな物語から、青い鳥文庫にありそうな海賊小説をみんなが書く中で俺だけはライトノベルを書いていた。
人間が捨てたゴミがモンスターとして命を宿す世界で、掃除屋と呼ばれる組織にスカウトされた主人公が可愛い相棒と共に妖刀を振るう。
タイトルは『こちらゴミ掃除屋です』。いや、こち亀かよ!
あの頃の自分にツッコみたい。
そのあと携帯小説にはまるが、中学生になって自分の中で執筆ブームが過ぎさってしまった。
再熱したのは高校の時だ。
小学生の頃に書いていた小説の設定集(として一部のページだけ使っていたノート)をたまたま部活の連中に発見されたのだ。
お前の小説読みたいわー、と半分冗談で言われた言葉を間に受けてノートに物語を書き始めた。
それから携帯小説にまたハマり(その頃読んでいたサバンナゲームの影響もあり)、親にノートパソコンを買ってもらったことによりその熱は拍車をかけていった。
ワード最高だぜ!と思ったのはこの頃が最初だ。
さらにニュージーランドの留学は小説を書く絶好の機会だった。
英語の勉強をしに行ったつもりが、まさか日本語の練習をすることになるとは自分でも思わなんだ。
あ、そうそう。思い出したのだが高校時代にあの『半分の月がのぼる空』で有名な橋本先生と出会ったことがある。
出会った、と書くとなぜか素敵な感じがするのだが、実際は学校で彼の講演会が開かれたのだ。
橋本先生が作家になるまでの壮絶な話と自分が小説に対して思うことを赤裸々に語ってくれたことは衝撃的で今でも覚えている(とかいって橋本先生の顔はもうぼんやりしてる)。
橋本先生からの質問でこんなのがあった。
『小説は自分のために書くものだと思いますか?それとも買ってくれるお客さんのためにあるものだと思いますか?』
僕はお客さんのためにあるものだと答えた。
じゃあ自分のために書くものだと思う人は手を上げてね、と橋本先生が言った。
僕以外全員手を挙げた。
ほんとそれも衝撃的だった。
やっぱりその頃から僕は《小説家》という存在が芸術家ではなくエンターテイナーのような存在だと思っていたのだ。
話を戻して、留学から帰ってきた僕の話をしよう。
留学中に書いた小説を、よし行けるぜ!という衝動と共に電撃文庫大賞に送り出した俺。
当たり前だが落選した(1次選考は通ったような気がする)。
そこからちょくちょく色んな賞に応募していたその頃の自分には将来小説家になるんだ!という夢ができていた。ちなみにこれが初めての夢である。
大学は小説家になるための時間!というマジでお前ふざけんなという親の声が聞こえてきそうな動機とともに大学入学を果たした俺はそこで演劇部と出会うことになる。
こうして俺は培ってきた小説の執筆スキルを脚本家として振るうことになるのだった。
どう思う?小学四年生だった僕。
こんな未来想像できたか?
そして俺は演劇部で恋をするのだ。
その相手こそ、マミである(めちゃくちゃ仮名)。
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