この話に名前なんていらない

@higasakota

第1話序論


  自分のためだけに書く物語は久しぶりだった。

 自分はエンターテイナーだと思いこみ、人からのウケを考えていつも物語を書いていた俺(ドゥームスコンプレックスは違うのだが)。

 大学の演劇部時代に書いていた脚本は、常にそれを見るお客さんのことを第1に考えていたつもりだった。

 でもこれから書く物語は俺の体験談だし、言ってしまえば日記と何ら変わらないものである。

 誰がそんなん見たいねん、と自分でも思う。

 何の偉業も成し遂げてない俺が書いていいものではないだろ、と思っている自分がいる。

 だから、これは俺のためだけに書く物語だ。

 未来の自分が過去を懐かしむためだけに書く物語。

 とかいっても完成すれば小説サイトにのせるだろうし、友達にも「見てよー」と駄々をこねるだろう。

 誰かに自分のことを聞いてもらいたい『俺』はそんな人間だ。

  でもまあ、なんでこんなことを書き始めたかというと、きっかけはアレだ。

 2年間付き合っていた彼女に別れをつげられたからだ。

 

 

 おい、お前笑うなよ。

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