第19話

太陽は中天を過ぎて、木陰をつくる葉や枝がさざめいた。フライングキャットは欠伸をするように低いうなり声を上げ始める。


「森の中を飛ぶこともできなくはないかもしれないけど、どうする?」

内部伝道菅トンネルから聞こえる悪戯っぽいナーラの悪魔の囁きに、エドガーは2、3度軽く指で叩いて返事を返す。


「中は少し窮屈だと思うけど、今すぐ大幅改造ってわけにはいかなくて……、次の街までは我慢してほしい」

「ルゥの柔らかい体に欲情しないでよね」

「ナーラ!」


にひひ、と笑うナーラと顔を赤面させるルゥ、そして気まずい顔でなるべくルゥから体を離そうと努力するエドガーを乗せて、フライングキャットは静寂な森の中から盛大に飛び出す。


「ナーラちゃんの超絶低空飛行をご覧あれ!」


機体は森の頭の上を、スレスレに飛んでいく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る