第9話「王女殿下!?」

「グラド様、ジルベスターの町が見えてまいりました。

間も無く到着となります。」


御者が父上にその事を伝えると父上はジルベスターの町の領主に知らせを送る為先に騎士数名を馬で走らせ知らせに向かわせた。

町の門には傭兵が両脇に並んでいた。

そのまま町に入り俺達の馬車は領主館へと向かった。

領主館の入口前にはこの町の領主、ジャルマール・フォン・ライアン子爵が待っていた。


馬車は領主館入口前で停車した。

そこで俺達は馬車を降り、この町の領主と挨拶を交わそうとするとライアン子爵は膝をつき貴族の最上級の姿勢をとった。


「お久しぶりです。

ユフィ王女殿下、それにグラド辺境伯様。

この度はこの我が領地にご来訪頂きありがとうございます。」


【辺境伯】

国境付近に防備の必要上置いた軍事地区の指揮官として地方長官の名称である。

異民族と接している為、他の地方長官よりも広大な領域と大きな権限を与えられており一般の地方長官(伯)よりも高い地位にある役職である。

それが我が父なのだ。

そして今回の宿は‥て


えっ!!!?


俺は目を見開き口を大きく開けてしまう程の驚きの表情を見せた。


「お、おお!王女殿下!!?」


声を大きくし驚く俺の慌てふためき様が面白かったのかユフィがクスッっと可愛いらしく笑う。


「な、何を笑って‥。

わ、笑っておられるのです。

これが驚かずにいられるものですか?」


俺はさっきまでの親しみやすい話し方を訂正し慌てて謝罪の頭を下げようとするとユフィ王女殿下は俺の口に人差し指を当てた。


「大丈夫だよ。

気にしてないから。」


「!!?」


その様子を父上と母上が見て俺に軽率な行動があったのかと心配し慌てだす。


「お、王女殿下!我が息子が軽率なことでもしでかしましたか!?」


「大丈夫ですよ。

何もありません。」


「そ、それなら良かったです。」


父上と母上はホッと胸を撫で下ろした。


それから俺達はライアン子爵のメイドの案内で迎賓館に移動した。

今日の宿は迎賓館の一室を借りる。

メイドに連れられ、それぞれ別々の部屋へと案内された。

後程晩餐が用意されるとメイドが言ったが疲れもあり俺はそのままベットに転がり込み意識を手放した。


〇〇


翌朝。

俺の部屋の扉からノックが鳴る。


「どうぞ」


俺が声を返すとメイドが頭を下げ俺に挨拶を交わす。


「朝食の準備が整いましたので晩餐室へいらして下さい」


「わかりました。」


俺はそう言って部屋の中にある大きな鏡の前に立ち、身だしなみを整える生活魔法を掛ける。


「【#清掃__ラヴァーシュ__#】」


見る見るうちに全身の汚れや服のシワ、寝癖などが綺麗になっていく。


「よし!」


再度鏡の前で身だしなみをチェックした後、俺は部屋から出た。


晩餐室に入るともう既にテーブルの前に父上と母上、ペルシアも席についていた。


そしてユフィ王女殿下も。


気になったのがユフィの隣に座るインテリメガネをかけた騎士らしき、やたらと偉そうで顎のシャクれた30代ぐらいの男だ。

見た目で決まった。

俺は彼奴をシャクレと命名した。

シャクレは俺を見るなり立ち上がり俺の側へと歩み寄り前に立った。


勿論だが俺は子供でシャクレは大人だ。

近くに寄れば身長の差は明らかだ。

それにいくら王国騎士とは言え、俺は辺境伯の息子だ。

その俺に対してそんなに近くに来て俺を見下すとはなかなかの太々しさだ。

それに此奴の目。

人を蔑む様な腐った目をしている。


「これはこれは、スタン殿お初にお目にかかります。

私、チャコールと申します。

見ての通り王国騎士でございます。」


シャクレは白々しく頭を下げる。


「この度はユフィ王女殿下を身を呈してお守りになってくださったとか。

心から感謝いたします。」


「いえ。

最終的に王女様に治療してもらう形になってしまったので、お会い子ですよ。」


「ちっ‥」


「ん?」


「失礼、この頃鼻が痒くてしかたないのです。」


今のは明らかに舌打ちだよな。

それにその舌打ちは父上と母上に気付かれぬ様、意識を払ってのものだった。

恐らく子供だと思って舐められているようだ。


この態度からして昨日の俺の勘繰りが益々確信じみてきた。


ここで少し探りを入れてみるか?、と俺は考えたが今ここで何かを言っても恐らく誤魔化されてしまうのがオチだろうと思い今は抑え、その機を伺うこととした。


挨拶を交わした後、俺は席につこうと父上の隣の椅子を腰わ下ろそうとするとメイドが俺を引き止める。


「スタン様。

スタン様の座席はこちらでございます。」


「!?」


指示を出され椅子を引かれたのはユフィ王女殿下の隣の席だった。

これには父上と母上も驚きの表情をみせる。


「え、い、いくらなんでも王女殿下のお隣とは恐れ多いですよ」


慌てて俺は遠慮させて頂こうとするとユフィ王女殿下は口を膨らます。


「何?スタン君は私の隣は嫌なの?」


「えっ!?い、嫌ではないですけど。」


っつか嫌とか言えねぇだろ!


「じゃぁ、座って」


ユフィ王女殿下は俺の言葉に安心したのかニッコリと笑顔を作り、俺を隣の椅子に来るよう椅子をポンっと叩き、俺は動揺しつつもその椅子に腰掛け、朝食は始まった。


そうして俺は朝食中、ユフィ王女殿下とたわいもない話題をし、楽しんで食べた。


父上と母上については俺が王女殿下に粗相をしでかさないかヒヤヒヤし喉を通らなかったのは言うまでもないだろう。


朝食を済ました後、またこのまま王都まで同行する事となり、俺達は馬車に乗り込んだのだが‥。


「どうしてまた僕はここにいるのでしょう?」


そう、俺はまた王女殿下の乗る馬車に乗っていた。


〇〇〇〇


少し遡る。


「王女殿下!

いくらなんでも馬車の中で2人きりとは不謹慎すぎますぞ!」


シャクレが王女殿下に抗議する。


何故ならまた俺と一緒に馬車に乗るとユフィ王女殿下が駄々を捏ねたからだ。

まぁ、これはごもっともな話だ。

これについては父上も母上も賛成の意を見せた。


「そうですよ。

王に知れたら私は大変なこと‥「大丈夫です!」


父上の言葉に王女殿下が言葉を重ねる。


「父上なら、そのな些細な事、何もいわないと思いますから。」


王女殿下はその言葉を告げると強引に俺の手を引き、馬車に乗り込んだ。


〇〇〇〇


そして今。


「ごめんね。

スタン君。

私と一緒にいるのは‥嫌‥かな?」


少し頬を赤く染めモジモジしながら上目遣いを使い可愛いらしく俺を見るユフィ王女殿下に何も言えるはずもなく、何故か俺も頬を赤く染めるのだった。



=========°===°==============


更新が遅くなっていて申し訳ないです。






















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