第6話 「国王からの呼び出し」

あれから5年の月日がたった。

俺ももう9歳の歳である。


この四年間、俺はひたすらに自分の持つ知識をこの異世界で振る舞った。


干し柿のその後は名産品にはなったものの賞味期限が、出来てから大体3日と割と短めなうえに季節限定、プラス割と地味ということもあり、土産としては不完全で長旅の人などの土産品にはならずじまいだった。

そこで俺が考えたのは魚だった。


俺の住む領地には海がある。

なのであえて土産品を作らずとも干物といった長期保存のきくものがある。

だがもう一つ工夫すればまた違った味わいを楽しめるのではないだろうか?と俺は考えた。


そして思いついたのが魚粉だ。


俺は早速父上に圧搾機を絵で描き考案した。


父上は干し柿の件もあり、俺の発案を高く評価してくれていたみたいで直ぐに鍛冶屋に掛け合ってくれた。


そして圧搾機が完成した。


そこからは簡単だった。


魚を窯で煮熟した後、圧搾機で油と水を分離し、乾燥させた後、すり鉢のような物で粉状に砕く。

これはフィッシュミールといって、原料の肉質によりホワイトミール(白身魚の魚粉)とブラウンミール(赤身魚の魚粉)に分けられる。

これだけでもタンパク質など栄養素が多く含まれているが、それプラス。

乾燥させた昆布やキノコも粉状にし、混ぜ合わせれば完成。


そうすれば振り掛けにも可、出汁として使うことも可、といった万能の調味料となる。

勿論日持ちも長い。

だがこの世界に冷蔵庫などという立派な物はないため唯一の湿気が気になり、魚粉を詰めた壺に石灰石を入れる事により更に日持ちさせることをクリアした。


思った通り魚粉は見る見るうちに我が領地の名産品と土産物になり大繁盛となった。


それ以外にも圧搾機を作った事により俺は更に油を作ろうと決意し、民の農家にオリーブ園や菜の花園、胡麻園などを父上に提案し取れた実を圧搾機に掛け、さらに油も手に入れることが可能となり、料理の幅も広がりこれもまた大繁盛となった。


そのおかげで我が領地は他の領地よりも軍を抜く豊かさに変わっていったのだ。


父上も母上もこの事で満足気な表情をしてくれていた。


兄二人はというと、この世界では10の歳で学校に通う。

それに加え冒険者登録も10の歳でできるらしく2人は冒険者かつ学生になっていた。


学校は6年制度で、この世界で成人の歳で卒業することとなる。


その後の其々の実力はというと、

アルバ兄さんはあれからもメキメキと力をつけていき、格闘家としてやはり才能があったのか11の歳でDランクの称号プレート(シルバープレート)まですでに駆け上がっていた。

アルバ兄さんも立派に周りからは天才と呼ばれてはいるが、やはり超えられぬ壁があった。


アルス兄さんだ。


早くもSランクの称号プレート(プラチナプレート)を所持し史上最年少の天才童子と呼ばれていた。

戦闘スタイルは自由形、型にはまらぬスタイルだ。


ちなみに我が家にいる俺の専属メイド、ペルシアも槍使いの元Sランク冒険者である。

こうして近くに2人もいれば結構な人がいるように感じ特別感を感じなかったがSランク冒険者は世界でも10人もいないと聞き、その2人の凄さを改めて感じた。


それが俺の師匠なんだから、コレはすごい事なんだろう。


そして俺の実力はというと相変わらず平凡すぎるぐらいの平凡さで、戦闘スタイルはシーフ系。

確かに人よりは動ける方だろうが、どうも性格上ストッパーをかけてしまっているのか、思うように成長せず伸び悩んでいた。


アルバ兄さんはペルシアとの訓練中、俺にいつもこう言う。


「何でできねぇんだ?

ここをバッ!とやってズバっ!とすりゃいいのによぉ」


兄なりの親切心で教えてくれているのだろうがやはりアルバ兄さんも天才所以が擬音ばかりでイマイチ何が伝えたいのかサッパリだった。


改めて俺はコツコツと強くなるしかないのだろうと実感していたそんなある日、王国からの伝達者が屋敷に訪問し俺宛に国王からの直筆で王城への呼び出しがくだされ、父上同伴で王都へと向かうこととなった。









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