第4話 「渋柿の襲撃」

いよいよ渋柿の襲撃の時。


アルバ兄さんはこの何日間で自分が魔法を放つよりも拳に魔力を溜め、打つける戦闘スタイルがあっていると気付いたらしく、まだ幼いアルバ兄さんは前日から渋柿をブチのめす!と意気込んでいた。


俺は魔闘術を発動できたものの持続が難しく、今の状態では実戦に役に立ちそうもないのでアルバ兄さんとの相談で、始めにペルシアに教えてもらった【#魔弾__パレット__#】で迎え撃つということになった。


そして当日。


街に渋柿が飛ばぬよう街の前には丸太を組み合わせた大きな砦が幾つも並べられている。


渋柿対策として皆フルアーマーを装備し砦の裏で今か今かと渋柿を待ち構えていた。


そして俺達はというと。


「アルバ、本当にこんな所でいいのかい?」


アルス兄さんは皆がフルアーマーを装備しているにもかかわらず、旅人のような服装をしている。


「あぁ!

いいに決まってんだろがよ!

俺はやるっつったらやる男なんだよ!」


「なんで俺まで‥。」


アルバ兄さんはフルアーマーではなく。

薄い胸当を着用し動きやすさ重視にしていて拳には金属プレートが施されたグローブをつけている。

勿論俺はフルアーマー着用だ。


「これは父上に見つかったらドヤされるだろうなぁ。」


そう言ってアルス兄さんはニッコリと微笑み渋柿が降りてくる山を見つめた。


それに対し俺は悲壮な顔をしている。

なぜなら最前戦の小さな砦にて渋柿を待ち構えるハメになったからだ。

実際俺はこの渋柿の襲撃に参加するのは今年初めてなのだが、毎年襲撃をうけた冒険者達はフルアーマー共々ボコボコに殴られたような顔で帰ってくる為、その脅威は行かずとも感じとっていた。

そんな不安を他所に砦奥の展望塔から金の音と声が上がる。


「きたぞー!渋柿が来たぁ!!


カンカンカンカン!!!



山の方へと目を向けるとドドドドと砂煙を舞いあげヘタを回し飛んでくる渋柿供が現れた。

そして渋柿が一斉に雄叫びをあげる。


「「「しぶ~いぃぃ!!!!」」」


アルバ兄さんは両の拳をガツガツと二回打つけ、気合いを引き締めた。


「よっしゃ!スタン!

作戦通り援護頼むぞ!!」


「はいよ!」


アルバ兄さんはそういうと、砦から飛び出し渋柿に走った。


それと同時に後方の冒険者達も一斉に砦から飛び出し怒号を上げる。


「「オォォォォォォ!!!」」


渋柿との合戦が始まった。


「行くぞコラァ!!」


アルバ兄さんは次々と渋柿をジャブ、ジャブ、ストレート、フックと華麗にステップを踏み拳のみで沈めていく。


そんな中、後方の冒険者も前に踊りでて砦の裏に隠れる俺を横切ろうとしたその時、冒険者の顔面に渋柿が直撃しクルっと宙返りし冒険者は地面に頭から崩れおちる。


ズガァ!


一瞬にして俺の顔は蒼白になる。


えっ?コレマジ死ぬくね?


そんなことを思いながら後方を見渡すと、次々に渋柿にブチ辺り弾き飛ぶフルアーマーの冒険者達の姿があった。


俺は体が固まった状態になるとアルバ兄さんの声が耳に響く!


「コラ!スタン!!

ビビってんじゃねぇぞ!!!

早く援護してくれよ!」


その声に俺は我を取り戻しアルバ兄さんの方へと向き直した。


援護するにもどうしたら?


そう考えているとアルバ兄さんの真上から突撃しようとしている。


「くっ間に合わねぇか!」


ボォン!!!


咄嗟に俺は【#魔弾__パレット__#】を放ち、渋柿に直撃させた。


アルバ兄さんはグルっと俺の方へと顔を向け親指を立てた。


「ナァイスだ!スタン!

その調子で頼んだぜ!」


そんな感じで次々と俺とアルバ兄さんは渋柿を撃ち落としていったが今年は例年より渋柿が多いらしく、次第に魔力が切れていき息が荒くなっていく。

そしてついに俺の魔力が切れ【#魔弾__パレット__#】が放てなくなり、アルバ兄さんの体に渋柿が直撃し吹き飛ばされた。


「アルバ兄さん!!」


俺は思わず砦から飛びたしアルバ兄さんの元へと走ろうとするとアルバ兄さんは怒号を上げる。


「来るんじゃねぇ!!!!」


その声に俺は思わずたち止まる。


「危ねぇからそこにいろ!

これは俺の戦いだぁ!!!」


アルバ兄さんは痛みを堪え立ち上がりまたもや渋柿を殴りつけた。


「かかってこいよぉ!!!」


なかなかの根性でカッコいいシーンだが何とも相手は渋柿なのだ。

カッコのつかない感じだがあの渋柿の脅威をこの合戦で何度も目の当たりにした俺にはアルバ兄さんの勇士が神々しく輝いて見えた。


その影響かアルバ兄さんの怒号は他の冒険者を元気ずけ、「あんな子供が頑張ってるんだ。」「俺らも頑張らねば!」と更に渋柿との合戦は後半戦へと雪崩れ込み、今年は例年より多い渋柿の襲撃にも関わらず、ここ何年も街に気概が無かったことは無かったのに街は無傷で終戦した。


そして勝負の行く末はと俺とアルバ兄さんはアルス兄さんの方へと目をやると、アルス兄さんを囲むようドーナツ状に渋柿が山積みに積まれていた。

さらに驚くことに服は来た時のままの埃1つかぶらず綺麗な状態で涼しげな顔をしていた。


「いやぁー大量だったね。」


爽やかさ溢れるアルス兄さんに、俺とアルバ兄さんは大きく口をあけボー然と立ち尽くす他がなかった。










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