第1話 「夢を見よう」
そんなこんなで俺は3歳なった。
身体の動きはまだぎこちなさが残るが大分と自由がきき、動き回ることが出来るようになった。
言葉はまだ舌足らずのようになってしまうが意思は伝えることができる様になった。
そして今、俺は専属のメイド、ペルシアに屋敷の中にある割と大きな図書室につれられ勉学に励んでいた。
ちなみにペルシアは産まれた時からの付き合いで頭に黒毛のケモノミミ、お尻には黒毛の長いシッポが付いている獣人族だ。
この世界には多種族が存在していて人と普通に共存して暮らしている。
「わぁ、スタン様は3歳だというのに秀才でございますね。
もう読み書きについてお教えする事がないですわ。」
ペルシアは両手を重ねネコミミをピクピクさせ満面の笑みをみせる。
「いや、ペルシアの教え方が上手いからだよ。」
ペルシアはただのメイドではない。
戦闘、魔法に勉学となんでもこなしてしまうスーパーメイドなのだ。
「まぁ、そんな上手な返答まで返せるのんてとても3歳とは思えませんわ。
ありがとうございます。」
精神年齢はもう30ですがね‥。
内心思ったが言えるはずもなく俺はペルシアにニコっと笑い返すと、本棚から予め取り出していた手元の本に目をむけた。
俺が持っている本はこの世界の料理についてだ。
転生前の俺は料理本を読み漁っては作るという趣味があった為、この世界の料理本は俺にとって興味深く最高の楽しみだった‥。
のだが、どの本を読んでみても調味料というものが塩、胡椒しか使われていない。
それに、調理法も焼く、煮る、干すのこの三種類しか調理の仕方がないのと火加減など事細かな事が書かれていない。
それにこの世界には食材に対しての下処理というものがないのだろうか?
いや多分、下処理の仕方じたいが
この世界にはないのだろう。
普段食卓に出される魚や肉などの生臭さが消えてなくて、とてもじゃないが食べれたものじゃないことがある。
唯一美味しく食せるのは干物系か塩焼きぐらいだ。
そして驚くことにその臭みの残る食材を平気で食し美味しいという家族の姿だ。
バン!
図書室の扉が勢いよく開かれ一人の小さな男の子が入ってきた。
「おぉいスタン!また勉強してんのかよ
」
俺はその存在にかなりの嫌そうな顔をする。
「に、兄さん。
何の様だよ。」
そう、俺には兄が2人いる。
そして今登場したのが2歳年上で次男のアルバ兄さんだ。
なんでもかんでも恐れを知らず豪快な性格でケンカっぱやい我が家の問題児だ。
だけど何故か俺のことは可愛いらしく、やたらと俺の世話を焼きたがるのだが、それが返って兄の性格上裏目にでてしまい危険な厄介事に巻き込まれるのが多々ある為、俺は嫌そうな顔をしたのだ。
「おい、ペルシア
スタンの勉強は終わったんだろ?
スタンを連れていってもいいか?」
「えぇ、もう勉強の時間は終了しています。
大丈夫ですよ。」
俺はペルシアのその一言にギョッとした目を作り
なんてこと言いやがんだこの野郎!と思った。
「ささ、スタン様。
勉強も大切ですがお外で遊ぶことも子供にとってはとっても大切なことですわ。
それに‥。」
そういってペルシアは指をパチンと鳴らすと、図書室の魔石センサーが働き一気に図書室内のカーテンが開かれ日差しが図書室一面に入り込む。
「外はこんなにもいいお天気なのですから。」
〇〇
「おいスタン!
本ばっか読んでねぇで!
俺と一緒に強くなって大きくなったら一緒に狩りに出る冒険者になろう。
俺たち兄弟は貴族の産まれだが次男に三男は大きくなったら領地を裏手で管理する役目に回るだけで領主になれるという訳ではない。
そんなつまらん人生は送りたくないだろ?
どうだスタン?」
アルバ兄さんは、5歳とは思えない程の決断力プラス何時も唐突に目標を立てる。
そして唯一尊敬するのはその目標をなんとしてでもやり遂げてしまうということだ。
だが何故かその行動に俺を無理矢理巻き込み参加させる傾向がある為サラッと断る。
「ヤダ。」
そんな返答が返ってくると予想していなかったのかアルバ兄さんはギョッと目を見開き俺を見た。
「何故だスタン!!
俺と一緒に2人の夢を叶えよう!」
いつから俺の夢になったんだよ。
俺は頭を掻きながら答えた。
「だって俺にも夢はあるし。」
またもやギョッとした顔で俺を見る。
「なんだって!?
さ、ささ、3歳のくせにもう夢が決まっているなんて‥。」
お前もそんなに歳離れてねぇだろぉが。
俺は肩を落とし眉毛をハの字にした。
「スタンはいったい何になる気だ?」
「俺は‥。
料理がしたい。」
そうだ、折角転生したんだ。
自分の好きな事をして俺は新しい人生を楽しみたいんだ。
「おお!!素晴らしいじゃないかよ!」
以外な反応に俺は戸惑いを見せる。
「えっ!?いいのかよ?」
「いいに決まってんじゃんよ!
やっぱりお前は冒険者になるべきだ!」
俺は口を大きく開き白眼をむく。
「な、何でそうなるんだよ!?」
「つまりはアレだ!
料理するにも食材が必要な訳だろ!
そんじょそこらの食材を使った料理じゃそこらの飯屋と一緒だぜ!
どうせするならもっと高級な肉をだせ!
だが高級な肉でもそこらに売ってる肉じゃ話になんねぇ!
殆ど手に入らねえドラゴンみたいな最強の魔物の肉をだそう!
ほらな!繋がったろ!
そん為には狩らなきゃなんねぇ。
冒険者になるしかないだよお前はよ!」
無理矢理のこじ付けの様な感じだが、アルバ兄さんの眩い程キラキラした瞳に映る夢は俺のまだ石ころの原石をキラリと今光らせたのは紛いもない事実だった。
まさか、5歳の子供に夢を見させられるとはな。
俺は少し笑い肩をすくました。
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