言い訳



泣きそうな程に、懐かしい

不意に強く抱きしめられて思わず息が詰まった。

その広い背中に手を伸ばしても良いのもかと、不安になってしまうほど温かな腕だった。


小さく、今にも街の騒音に掻き消されてしまいそうな声で


「遅くなって、ごめん」


そう言った彼の表情は見えなかったけど、きっと酷く泣きそうな顔をしているんだと思った。


「いいよ。でも、誰かが言ってた、会えない時間が二人を育てるだなんて言葉は嘘だったね」


そう言って笑うと、彼は一層強く私を抱きしめた。


「今日からはまた、二人で歩いていこうね」


頷く彼にようやく腕を回し、途方のない長く寂しい夜が終わることに安堵した。

きっとあの言葉は、別れを惜しむ恋人達の、どうしようもない言い訳だったのだろう


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