ダージリン


一晩かけて降り積もった雪が、

行き交う人々によって黒く、淀んでいくのを黙って見つめていた。


二度と吹き返すことのない白に

それをまるで「僕みたいだ」と貴方は笑った。

暖かいはずのレモンティーも、どうしようもなく冷たく感じて。

立ち上がる湯気に嫌悪を抱く。


「飲まないの?」


私にそう問う笑顔でさえも。


『僕みたいだなんて。

大丈夫よ。貴方も私も、元々白ではないわ。』


嬉しそうに、それでいて世界で一番悲しそうに微笑む貴方のダージリンが揺れる。


「それも、そうだね。」


私がこんなに苦しいのも、貴方がこんなに悲しそうなのも。


被害者面して生きていこうよ

全部、世界のせいにして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る