<ウイザードはハーレムがお好き?>~ 夢幻誘惑のパラノイア ~
色気づいてきたガキが普遍的な真理として問うものの一つに、男と女の間に友情は存在するかというものがある。
当然、答えはそいつら次第と言うしかない。
要はその人間にとって性衝動や恋愛感情が人間関係を築くのにどの程度の重要性を占めるかなどという話なのだから、汎用的な答えなど出ないのは明白だ。
恋愛感を聞く質問として本来は使われる問いを、全ての人間がどうあるべきかという意味で使うことでその幼さを露呈する微笑ましい問いだ。
しかし、それが公的な場で宣伝されるようになり、愛が国家を救うとか愛のために戦えだとかいう話になってくると途端にきなくさいものが背後に漂うようになる。
子供騙しの論理の混同を使って行われる煽動も、思考能力を発達させる教育が普及していない国では、バカにできない効力を発揮するものだ。
この手法は先進国家と後進国家の区別なく様々な場面で行われる詐術の類だが、これを防ぐには論理的思考と論理の混同を起こさない為に物事の本質を考える教育が必要になる。
経済学に例えるなら、金銭を儲ける為のシステムを教えるのではなく。
貨幣とは仕事や物を交換するシステムの一つでしかないことや。
貨幣が作られた目的は、より多くの人間を養える社会をつくることであり。
その目的に反した金儲けは人類に対する裏切りであることを教え。
そんな金儲けをする人間を廃絶する方法を研究することが重要だという教育がそれだ。
この世界にある全ての概念は人間が創り出したもので、特に形のないものや人間が作っているものには必ず、創られた目的がある。
本質を見るとはその目的を表向きに語られ、あるいは騙られている理由を鵜呑みにせず。
過去と現在を通してそれがどう使われてきたかを見ることで論理的に自分の答えを出すことだ。
それができて初めて、やつら‘下種脳’から運にまかせず身を守ることできる。
正義という言葉を歪めて自分達の利益にすり替え。
自分達の為に死にそして殺す人間を造り出して戦いに駆りだすために愛という言葉を道具として使い。
信頼という言葉を利用し、何も考えずに盲目的に自分達の作った価値観に従う犬のような人間をつくる‘ 下種脳 ’。
電車の中で痴漢をし、小さな子供を力ずくで犯す。
夫に保険金をかけて殺し、汚職を秘書に着せて殺す。
遊びで万引きをして経営者一家を路頭に迷わし、過労死した社員にかけた保険金を着服する。
そんな欲望を制御できない‘ 人 ’になりそこねた‘ 下種脳 ’。
自らの利の為にだけ互いに利用しあい、共食いするように互いを喰いものにしあい。
社会学の理を否定するために、弱肉強食という生物学の理を歪めて作り出した価値観で、非道を正当化して恥じない猿山の猿同然の‘ 下種脳 ’。
社会という集団を維持し人が生きていく為に創り出した理想を踏みにじり。
子供に真っ先に教えなければいけない人類全体の利益を行いで否定し続け、不和と不信をばらまく。
目先のことしか見ず考えない、“ ゆっくりと社会全体を蝕むそんな寄生虫のような‘ 下種脳 ’ ”。
そんな‘下種脳’が仕組んだであろうふざけたゲームの参加者になることではなく。
MMORPGリアルティメィトオンラインを模したこの仮想世界に取り込まれた日からオレがやってきたのは、この仮想世界を脱出する方法を探ることだった。
突然森の中で目覚めたオレは、ここに至る記憶が抜け落ちていることを知り。
ゲームキャラの仮装をさせられその中で出てくる建物が存在することから、自分が‘下種脳’に拉致されたか記憶喪失に陥っていると推測した。
とりあえず逃げることを試みたが、ここが日本ではないことを知りそれを断念。
その過程でオレは顔まで自分の操るゲームキャラそっくりになっていることに気づく。
そして超人的な身体能力を得たことにも。
サイバー技術による身体改造を受けたのか。
ASVR(全感覚型ヴァーチャルシステム)内でデータ反映された幻影を現実と認識しているのか。
それともオレの頭がどうかしてしまったのか、どれにしろそれは最悪の事実を指していた。
逃げられないことをさとったオレは情報を得るために‘水晶のアルケミスト’と呼ばれるゲームのNPC、ミスリアに接触する。
だが、ミスリアは何も知らず本当に自分を‘水晶のアルケミスト’と思い込んだ犠牲者にすぎなかった。
このときだろう、オレがこの事件の背後に‘下種脳’どもが存在するのを確信したのは。
オレはミスリアとともに現実か電子世界かに構築された仮想世界から脱出することを決め。
人格を書き換えられてしまっている彼女に催眠をかける。
だが、事はそううまくは運ばない。
その後、ミスリアを尋ねてきた‘流浪の精霊騎士’と呼ばれるNPCの記憶を刷り込まれたシセリスと死闘を強制される。
そこでオレは魔術というあり得ない現象を見て、狂ったのでなければASVRの世界に取り込まれているのだろうという結論を得る。
そして、それはこの世界を変革する以外に逃げ道がないことを示していた。
ではどうすればいい?
世界を破壊する?
諦めて‘下種脳’が飽きるまで待つ?
どれも意味がない。
オレがハッカーでなければ手段はないはずだった。
しかし、ハッカーであるオレにはASVRをハックするという脱出法がある。
データとして構築された世界なら必ず存在するであろうバグを使った脱出。
夜空に浮かぶ月の模様に自らの徴した刻印を見出したオレは、このASVRにより構成された世界がオレのハックの影響をすでに受けていることを知り、それが可能だと確信した。
そうしてバグを探す旅に出たはずのオレ達を待っていたのは、野盗の乗合魔動車襲撃とユミカにシュリという二人の少女との出会いだった。
この二人は姉妹でオレと同じようにこの世界におそらくプレイヤーとして囚われた人間だったが、その認識は平行世界に異世界転移したというなんとも無邪気なものだった。
それがASVRによる意識操作なのか、それとも昨今の‘下種脳’によって作られた意図的に国民から考える力を失わせる教育制度のせいなのかはわからない。
ただ一つ解っているのは、それが少女達を含めた自らを‘渡り人’とよぶ本来の人格のままこの世界に囚われた人間の常識となっているらしいことだ。
もちろん常識など、時代でも場所でも、互いに離れていくほどに大きく変わる不確かなものだ。
言わば環境によって作られる集団幻想やローカルルールにすぎない。
しかし、それが作られるのに‘下種脳’どもが関わることが多いのは、身近な例では戦前の軍国教育や戦後のアメリカ文化による日本人への集団的な意識操作。
共産思想や宗教を悪用した人間達によるテロ、更にはそのテロを利用した石油メジャーや死の商人が煽った戦争という歴史を見れば明らかだろう。
野盗を始末して乗合魔動車で出発したのは良かったが、今度はその魔動車が暴走。
それを切り抜け村へ到着すれば、その村が大量の魔物に襲撃というトラブルの大安売りに、オレは背後に蠢く‘下種脳’の影を感じていた。
次にやつらは何を仕掛けてくるのか?
オレはベッドに腰掛け4人の女達に囲まれ考えながら、そんなことを考えてていた。
「ねぇーえ。デューンったらあ」
オレをリアルティメィトオンラインの人工言語ティーレル語のダーリンやあなたといった意味を持つ呼称でよぶのは、ミスリアだった。
肩へと流れる柔らかなダークブロンドの髪をしどけなく乱し。
髪と同じ色の形のいい眉の下で、長いまつ毛に縁取られたエメラルドの瞳を潤ませ。
触れんばかりの間近から顔を覗き込んで
くる。
普段は怜悧な印象を与える線の細い美貌が今は艶めいて臈たけた趣を感じさせていた。
「デューゥン♪」
目元を赤く染め、コーラルピンクの肉感的なくちびるからもれる酔っ払い独特の間延びした声でオレを呼びながら。
背中にしなだれかかってくる肢体からは、香木に似た爽やかな甘い匂いが漂ってくる。
胸や腰は豊かなのにウエストはみごとにくびれ。
首や腕もひきしまってたるみすらない完璧
なボディラインを見せ付けるようなシルク色の薄いネグリジェ姿だ。
ブラをつけていないのか、押し付けられる柔らかな双球の頂上で堅くなった尖りが感じられる。
「──御主人さま」
ついさっきまでは素面だったシセリスまで、いつの間にか表情を蕩けさせて薔薇色の唇から吐息まじりの熱を帯びた声を漏らし、オレに擦り寄って来ていた。
ミスリアと対照的な長いプラチナブロンドを綺麗に結い上げ、銀色の長いまつ毛に飾られたアクアマリンの瞳を揺らして。
熱の篭る視線でオレを見つめる様は、普段の凛とした怜悧な美貌に優美さをくわえている。
バレリーナか体操選手を思わせるしなやかで美しい均整の取れた肢体を包んだ衣服。
肌にぴったりとくっついた薄いコルセットタイプの黒いインナーに、同じ素材のショートスパッツと半透明の黒いストッキング。
という機能的な割りに煽情的なその姿のせいもあって、こちらも普段の清楚な風情からは想像もできない艶やかさだ。
「ししょー。あたし、なんかへんだよぉ」
普段の快活さとは遠い戸惑うような涙ぐんだ声でユミカが、形の良い柔らかなふくらみに挟んだオレの右腕を揺する。
オレの脚に絡んでいたしなやかな白く長い脚は今は閉じられ、ふとももを擦り合わせるようにして身悶えている。
やや高めのアルトが今は少し低めのソプラノに変わり、それがいつものどこか中性的な美少女が、自らの女を意識しているだろうことを思わせた。
どこか幼さの残る可憐な顔立ちは紅潮して、涙に濡れた伏せ気味の琥珀色の瞳やとあいまって瑞々しい色気を感じさせる。
肩や腕にウエスト周りの大きく開いた丈の短い白いサマーセーターに光を浴びると緑を帯びる黒っぽいジーンズ地のホットパンツ。
という女達とは対照的なラフな姿がその魅力を引き立てていた。
「ん……ふあ」
その姉のシュリはといえば、オレの左膝を枕に鼻にかかった喘ぐような声をあげて。
洋風の綿生地で仕立てられた緋色の長襦袢を小さな身体に纏い、白いシーツの上に広がった絹糸のような黒髪の上で身体をくねらせていた。
襦袢は大きく乱れ、小さく膨らんだ胸や華奢な手足が熱に浮かされたように自らの身体の上をさまよっている。
漆黒の長い睫毛に大きな切れ長の黒い瞳と朱に染まる白雪のような透き通る肌。
鮮紅色のくちびるからのぞく真珠色の歯と深紅の舌がうごめき、妖艶そのものの表情でオレを見る。
一見12、3歳に見えるが中身は大学生でユミカより年上なのだからASVRというやつはやっかいだ。
ハーフだというのにユミカ以上に日本人にしか見えないのは、本来の成長して欧米人に近い容姿を嫌ったのか。
過去の最も日本人に近い容姿の自分をモデルにリアルティメィトオンラインのキャラを作ったせいらしい。
これがそのてのゲームなら魅了の状態異常を示すアイコンが表示されているような状況だった。
だが、リアルティメィトオンラインはR18ではなかったし、魅了はかけた相手が倒れるか戦闘が終われば消えるものだった。
この情欲に囚われたような状態に女達が陥ったのは、今から数分ほど前。
初めにミスリアがこの部屋を訪れて1時間ほどたった頃のことだろうか。
そういえば、ミスリアの家で女達が迫ってきたのもそれくらいの頃だったろうか。
とするとこれは強化されたオレの能力に関係した現象なのか?
「ごしゅじんさまぁ」
前から縋るように抱きついてくるシセリスにオレは考えるのをやめ、彼女達に対応することにした。
気は進まないがどうやら女達は限界らしい。
オレは身体の周りに‘気’を集めてそれを取り込みながら放出していく。
ヨガの達人や道士がチャクラが回るとか‘気’が巡ると呼ぶ感覚とともにオレは一旦放出した‘気’を纏っていった。
そして、その‘気’を操り女達の身体を包み、その内側へと押し入っていく。
あっけなく彼女達を守る‘気’の守りが破られ、オレの‘気’に満たされていった。
女達の‘気’は溶け崩れオレの‘気’へと変わり、身体の制御をオレに奪われる。
4人の身体を掌握したオレは活性化した脳の快楽中枢へと‘気’を送る。
その途端に爆発するように数種の快楽物質が溢れ出し、女達を麻薬的な快楽を超える快感へと誘ったのだろう。
「あ゛ああああっ!!」
背中でミスリアがオレの服に爪をたてながら全身をぶるぶると震わせる。
「いやっ……ああ! だめえぇつ!!」
一瞬遅れて、ユミカが堪えきれない快楽に甘い敗北の声をあげて、オレの腕にしがみつきながら身体を硬直させた。
「ああっ、や! ふあああ──!!」
同時につられたようにシュリも絶頂の声とともにオレの腿に爪をたてながら達する。
「ああ、ゆるして、もう!もうっ!!──んああ゛あ゛ああ!!!」
最後まで耐えていたシセリスも全てを解き放って敗北の嬌声を響かせながらのどを反らし弓なりに身体を痙攣させる。
「あ♥……あ♥……ああ♥」
背中から滑り落ちたミスリアが、何も見えていない翠色の瞳から涙を零しながら達し続け。
「やあ♥ らめっ♥……あ♥」
思考の全てを快感に満たされベッドに崩れ落ちたユミカが蕩けきった身体を力なく震わせ。
「あ♥……ひあん♥……あン♥」
小さく開いた唇から銀糸を垂れ流しながら赤ん坊がいやいやするようにシュリが首を振り。
「んあ♥ ぅん♥・・・ああ♥」
オレの胸に顔を埋めるように崩折れたままシセリスが見も世もなく唯、快楽にむせび泣く。
そのままオレは女達が快感のリミットを越えて意識が落ちるまで‘気’を何度も4人の身体に流し続ける。
悪名高いヴァーチャルドラッグ並の快楽が彼女達の全てを蹂躙しているのだろう。
ヴァーチャルドラッグはASVRシステムを使った犯罪の典型と言われるものだ。
禁断症状こそないもののその究極とまで言われる快楽は、意志の強い人間でもフラッシュバッグに近い常用性に悩ませられるという。
今回と昨日、彼女達を襲ったのはその症状に似ていた。
ミスリアとシセリスにユミカの3人だけならば、回数から考えて可能性は低いがオレのせいだということも考えられるが、シュリまでとなると話が変わる。
ハックの影響でオレ自身はそのての状態異常は起こさないから、食事に媚薬でも盛られたとも考えられるが、そうでなければ更にマズイ展開だ。
そんなことを考えているうちに、ユミカが快楽に耐え切れずに失神し。
ついでミスリアとシュリが最後にシセリスが気を失って。
オレは、彼女達の身体から異常な欲情と昂奮が消えたのを確認して‘気’を収めた。
まるで惚れ薬と媚薬をもられたような彼女達の有様が語るものは何なのか?
何れにしろ‘ 下種脳 ’どもが造り出したASVRのシステムが関係しているのだろうが…………。
最悪を考えればこんな事が続くなら、既に基の人格を失くした女達のように、少女達の人格崩壊を招くだろう。
リアルティメィトオンラインのNPC役を振られた人間は、‘ 下種脳 ’どもにオモチャにされ人格を破壊された‘ なれの果て ’の犠牲者なのかもしれない。
だとすれば、オレにできるもっともマシな選択とは何だろう?
‘ 下種脳 ’のせいで、既に最善は破壊され、現状のままでの脱出と黒幕の確保ですら被害は甚大。
時間が経つほど‘ 下種脳 ’に精神を侵され、歪んだ欲望に溺れて犠牲者が‘ 下種脳 ’へと変り、状況は悪くなって、やがて破滅が訪れるだろう。
オレにできるのは、その最悪を回避し被害を抑える事だけだ。
惨状を示す衣服やベッドを見て、その後始末も考えながら、オレは今後の道行きを思っていた。
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