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それはいつもと同じ一日のはずだった。不老不死の私は、幾ら空腹が辛くても病にすらならないし、死ぬこともない。いつも通り孤独と向かい合わせ。いつも通り、みそらのことだけを、みそらの幸せとみそらへの醜い希望だけを抱いて、ただ時間が過ぎていくのを待っているはずだった。
地下牢の呪は、私の魔力故に私をここに繋いでいる。私は魔女である限り、ここからは出られない。強い魔力を持つからこそ、強い呪がかかり、誰からも視認すらして貰えない。
それでもここに囚われる際にみそらだけが読み取れるように施した、微かな魔の残滓を辿って来てくれたらいいのに、なんて。醜すぎるにも程がある。
私を囲む魔力の檻に触れる。まるで水の中のように私は揺蕩う。でもそれすら許されてはいけないような気がして、私はその奥底で膝を抱えて世界をずっと遮断してきた。
世界から弾かれたのは、私の癖に。
と、何かが聞こえた気がした。気のせいだと何度も振り切ったけど、それはどんどんと近付いてきて。言い様のない不安と、身を焦がすほどのときめきと、頭の奥で鳴る警告音と、私の感情がごちゃまぜになって騒いでいた。
そして、遂に、この時はやって来た。
檻の中に光が集まり、それはあの時施した魔の残り粕。みそらだけが見ることの出来る、秘密のメッセージ。私はここにいるよ。あなたのことを待っているよ。そんな未練たらしくて情けない想いの最後の舞。それが、ここまで辿り着いた。
つまり、それは。
「……みそらっ……!」
こちらから見ることが出来ないように、あちらからも私を見ることは出来ない。諦めて帰ってしまうのではないか。そう思うとゾッとした。
「みそら! 私はここよ! あかりよ! 待って! 帰らないで! みそら!」
届くはずがないのに、聞こえるはずがないのに、叫ばずにはいられない。檻は割れない。それでも叩かずにいられない。
「みそら! ねぇ、みそら! 私、ずっと待ってたの……! だから、だから……!!」
思わず涙が出てきてしまう。ああ、もう、本当に情けない。泣くな、私。檻に手を触れて願う。星にではない。みそらの心に、願う。
「みそら。私を救い出して」
その瞬間、轟音と爆風が私を襲った。突然のことで、何も出来ずに吹き飛ばされるままになった私は、必死でしがみつくものを探した。その中に見つけた、伸ばされた腕は、まさか、本当に。
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