メイドVSメイド前編

 時は過ぎて早くも放課後、俺こと赤城タクヤはどうしたものかと頭を抱えていた。

 何に? それは勿論。


「貴方見たいなポンコツメイドがボクより優れているはずが無いだろう!」

「……何を言いますかこのボクっ娘メイド、今時そんなキャラ流行りませんよ」


 お分かり頂けただろうか? ん? 理解不能?

 それは奇遇だな、俺も理解不能デス。


「むぅ……こうなったら勝負です、メイドとしてどちらが優れているのか、ケリを着けましょう!」

「……望むところです、私こそがメイド、いや、メイド神に相応しいと思い知らせてあげます」


 とにかく分かっているのは、自らをボクと名乗る少し小柄な少女がオタク部の五人目の部員、そしてラノベ作家様のメイド、極めつけて、俺のメイドと仲がとてつもなく悪い、という事だ。


 どうしてこうなったのか? それは……



 ……ぶっちゃけますとめんどくさいので過去回想でどうぞ。



 ××××××××



 昨夜の暗黒カレーによって胸焼け、今朝の謎スープによって胃袋を完膚なきまでに破壊された俺は今日一日を乗り切るために耳に付けるイヤホンからアニソンを流しながらリツカと登校していた。

 ちなみに流れている曲はドラゴ〇ボー〇の有名OP。


「……タクヤ様、」

「……」


 後ろからリツカの声がする、しかし今日の俺はすこぶる機嫌が悪い、理由はリツカの特製激まずスープ (笑) にある、


 なのでとにかく俺は学校につくまではリツカを無視し続ける事にしたのだ。


「……おーい、タクヤ様……たっちゃん、たっくん? 玉三郎?」

「なんだ最後の名前は!?」


 ハッ!? しまったついリツカのアホさに突っ込んでしまった。これは俺の弱さと言うことなのだろう。

 俺は咳払いしてイヤホンから流れる曲の音量を二つ程あげる。


 ちなみに曲は名探〇コナ〇の有名BGM、理由? 知らん。


「……てれてーてーてれてーてーててーてれてれてててててーてーてーてーてれてーてれ……」


 何だ、BGMが重複して聞こえる気がする、

 ハッと気づいて後ろを振り返るも、そこには無表情で俺の後ろを歩くリツカしかいない、


「見た目は大人、ア〇コは子供、名探偵、股〇」

「おいリツカ!! それは流石に酷すぎるだろ!!」


 何だよその名探偵、思いっきり出オチじゃないか、と言うかリツカの口から下ネタが出る事が一番驚いた。


 ゴホン、何はともあれあともう少しで学校だな、ふぅ、何だか朝から体力を使った気がする。


「おいリツカ、俺が悪かった。もう無視はしな……」

「……ッ!?」


 俺が振り返るとそこには何故か無表情で戦闘モードに突入しているリツカがいた、はて。


「お、おい? どうしたリツカ、もしかし無視した事に相当腹が立ったのか? なら謝る、ほら、この通りだ!」


 俺は取り敢えず手を合わせて頭を四十五度下げる、ちなみにこれを最敬礼と言う。

 ん? どうでもいい? あそ。


「……ッ!?」


 しかしそれでもリツカの戦闘モードは解除されない、クソッ、

 しかしまだ早い時間で俺たちの他に登校する生徒が見当たらないのが不幸中の幸い。


 だから!


 俺は、会釈、敬礼、最敬礼、謝罪会見よりもさらに高みにある、最も効果的、そして最も屈辱的な手段を取ることにした。


 そう。ジャパニーズ土下座である。


「……」


 ただ無言で頭を少しひんやりとするコンクリートに付ける、そして指先はぴんと伸ばして頭の横に、大事なのは気持ちだ。


「……ッ!?」


 俺は少し頭を上げて様子を見る、しかし俺の視界は真っ暗だった。

 何故?


「相澤リツカ! およそ七年振りですね、このボクを覚えていますか?」

「……ッ??」

「ングッ、その顔は全く覚えていない様ですね!!」

「……ッ!!」

「何ですかその、『チッ、バレたか』とでも言いたそうな顔は!!」


 むぅ、何だ、声は聞こえる、と言うことは聴覚は問題無し、嗅覚は、微かに洗剤の匂いがする、問題無し、味覚は……


「……ヒャ!」


 何だ、何だか今舐めた所が一瞬震えた様な気がしたが、まぁ、何はともあれ一石二鳥、味覚触覚ともOKだ。


 しかし以前視覚は真っ暗なまま。

 取り敢えず情報を集めるために俺は耳を澄ませる。


「てか何で貴方スカートの中に男の頭がスッポリ入っているのに何も反応なしなんですか! 破廉恥何ですか!? 破廉恥何ですね!?」


 な、なぬ!? 誰だスカートの中に頭をすっぽりと入れている破廉恥男は!!


「……いいえ、これもメイドとしての務め、主人の欲求不満すら解消出来なくて何がメイドですか」

「むむ!! た、た、確かにそうでした、お嬢様の持っている本でも何故かメイドがエッチな事されているような本が多かったです」


 と言うかさっきから何の話をしているのだろう、メイドがどうのこうって、


「そこの男! いつまでも女子のスカートの中に頭を入れているのですか! いくらご主人様と言えど超えてはいけないラインという物がですねえ!」

「……タクヤ様は私のスカートの中に定期的に入らなければ死んでしまう体質なのです」


 はい!? 何だか今不吉なワードが聞こえた気が……。


 タクヤ様と俺を呼ぶのはリツカのみ、そして聞き覚えのない声の持ち主が言うスカートの中に頭を突っ込んでいる男、そして極めつけて今のリツカの証言……。


 なるほど、謎は全て解けた。


 そして記憶が飛んでった、記憶が飛ぶ前、最後に目にした光景はカラフルなシマシマ模様のパンツだった。



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