陰と陽
次の日の放課後、俺は自称黒髪美少女ラノベ作家と共に職員室へと赴いていた。
理由は勿論新しい部活動設立のための書類を貰うためだ。
「と言う事で先生、新しい部活を作りたいのですが」
隣の妄想少女がいつものクールキャラで先生にお願いをする、そんな表ズラだけは真摯な態度に心動かされたのか教師は関心して設立のための書類を渡してくれた。
その後俺達二人は自分の教室に戻り、すぐさま会議に移る、なんの? それは勿論。
「……この設立条件厳しすぎじゃないかしら」
「……確かにそうだな」
紙に書かれているのは、新しい部活動を作るための条件だ、まず、顧問が一人と最低でも部員が五人、そしてその部員全員が成績優秀でなければいけない。
顧問は何とかなるだろう、部員も恐らくどうとでもなる、しかし最後の成績優秀と言う条件のせいで選ぶ部員も限られてくる。
これは大分厳しいな……
「ねぇタクヤ、貴方に成績優秀の知り合いいる?」
「さらっと呼び捨てなことは置いといて、一人なら心当たりがある」
「ふーん、その人は?」
「俺のメイドだ、成績優秀だし容姿端麗だ」
「……なにそれ、自分のメイドが一番だとでも言うき?」
「無論だ、俺のメイドは何でも出来る」
「そんなの私のメイドだって同じよ!」
何故成績優秀の部員候補の話から自分達のメイドの優劣について喧嘩しなくては行けないのだろう。
そんな風に考えていると、教室の扉が開く音がした。
「あれ、赤城君? どうしたの?」
不思議そうな彼の顔を見ていると何だか吹き出してしまいそうになる、大変失礼なのは百も承知なのだが。
「あ、いや……そのーだな」
「……てか隣の女の人赤城君の友達?」
何故君がそんな彼氏を問い詰める彼女見たいな質問をしてくるのだろう、しかしながら俺は彼の剣幕に押され少し冷や汗をかいていた。
「言うなれば主人とメイドよ、根暗くん」
俺の代わりに喋ってくれたのはいいが、ふむ、主人とメイドか、ま、勿論主人は俺……
「そこのメイドが使えなくて困ってるのよ」
「おい、さらっと俺をメイドにするな」
「赤城君がメイド……プッ」
「おい、愛上君に笑われると何だかムカつく」
「酷っ!?」
この後愛上君に状況を説明するのに数分を要した、隣の女との関係や、何故教室にいるのか等、
……ちなみに一番説明するのに時間がかかったのは俺がメイドという件だ、……許すまじ、妄想女。
××××××××××
「という事で根暗くんは何か部活動入ってるかしら?」
「あ、あのぉー、ひとまずその根暗くんって呼び名……」
「拒否するわ、とにかく部活動入ってるの?」
わぉ、妄想女愛上くんに厳しいな、しかし根暗くんか、確かに妄想女の書く小説にはそんなキャラの奴がいた気がするのだが。
「は、入ってないです」
「それは好都合ね、よし根暗くん、貴方を私達の作る『オタク部』の部員三人目に任命するわ、感謝なさい?」
「ええ! 何か勝手に部員にされた!?」
驚愕の表情を浮かべる根暗くん、もとい愛上くんだった、その気持ち、痛いほど分かる。
「よし、これで部員は三人いるわね、あと二人を探さないと」
「と言うか俺もやっぱり人数に入ってるんだな」
手伝うとは言ったけど部活に入るとは一言も口にしていないのだが、まぁ、もうめんどくさいからいいか。
「当たり前よ、貴方がいないと主人公は誰が務めるのよ、そこの根暗くんには荷が重すぎるでしょ?」
「……僕何かサラッと暴言言われてる気が」
そんな愛上くんの言葉を無視して妄想女は続ける。
「は、もしかして貴方……そうやっていたい気な根暗くんを虐めて楽しむ最悪主人公なの?」
「まず色々言いたいが俺はそんなゲスな人間じゃない!」
この女は俺の事を何だと思っているのだろう、
「まぁいいわ、それはそれで面白そうだしね……」
恐らくそれが面白いと感じるのは一部の特殊性癖所持者だけだろう。
なんて事を思いながら俺は妄想女の書く小説の冒頭を思い浮かべる。
『知恵無きものは集まって集団となる、しかし知恵有る者は集団を拒み孤独となる』
そんな冒頭に俺は少し苦笑いしてしまった。
何故なら、俺は俺自身を知恵の有る者だと自覚していながら群れを好む人間だからだ。
金持ちによって集るゴミの様な人間等は嫌いだが、本当の友達と言う奴は好きなのだ。
しかし実際今はどうだろう、この学校に来て本当の友達という奴は出来ただろうか?
否だ、愛上くんは確かにイイヤツだと思う、しかし彼は影を背負っている、自身では必死に隠せているつもりでも、俺には分かるのだ。愛想笑いが得意で、周りに合わせることだけはいっちょ前な俺にして見たら。
その点妄想女はどうだろう逆に彼女には影が見えない、恐らく彼女は誰かの意見に左右されない我が道を行くタイプだろう。
二人は恐らく陰と陽、対照的で主義主張は絶対に合わない存在。
太陽と月、そんな分かりやすい表現で表すのなら、一体俺は何なのだろう。
「……てる? ねぇ赤城君ってば!」
「ん、あ、あぁ、すまない少し考え事をしていた」
深く考えすぎて周りを忘れていたらしい、これも俺の悪い癖だ、一つの事に集中したら周りが見えなくなるという。
「まぁ、いいわ、とにかく部員は五人揃ったから」
と、妄想女は言った、はて、何が起こった?
「……タクヤ様、私も部員になりました、宜しくお願いします」
お前か……
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