第4話

 タケミナカタは落胆した。

 救いの手を振り解いたことがわかったからだ。

 慣れ親しんだ山の景色もタケミナカタを惑わした。

「山よ湖よ、私が誤っていたというのか」

 すると、山が答えた。

「誤っていたというのかあ」

「どこが誤りなのだ」

「誤りなのだあ」

 タケミナカタは苛立った。

「答えになっておらぬではないか」

 またしても山は鸚鵡のごとく答えた。

「おらぬではないかあ」

 タケミナカタは山と会話するのを諦め、独り言のつもりで吐き捨てた。

「山までもが私を嗤っている。私が誤っていたのだとしたら、どこから誤っていたのだ?」

 驚いたことに、背後から答えが返ってきた。

「過ちて改めざる、それを誤ちといいます。あなたの誤ちはまだ終わっていません」

 タケミナカタは答えが返ってきたことにも、その内容にも驚いて、言葉を失った。失った言葉を取り戻そうとタケミナカタはもがきながら声のするほうをふりかえると、そこには小柄なたいそう美しい少女が佇み微笑んでいた。

「そなたは」

「西洋音楽の形式のひとつですね、作品としてはピアノ曲が多いようで

す。また、現代のセダン型のラインナップでもあるようです」

 タケミナカタは理解できずに口をぱくぱくさせるのみだった。

「冗談です。お気を損ねませぬよう」

 少女はにこっと笑った。

 ようやくタケミナカタに言葉が戻った。

「そなたはなにゆえさきほど姿を見せなかったのだ」

「はて。わたしは姿を隠してなどいませんよ」

「姿を隠して私に問答をしかけたのはそなたではないのか」

「お人違いをなさっておいでのようです」

「そうか。ならばそのときのことは忘れよう。そう言われれば声が違うよ

うな気もする」

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