10 古典落語
「ねぇ、私達で、小説を書いてみたら?」
彼女の提案に、部員たちは、間の抜けた顔をする。
ハツリさんが、言葉を付け足す。
「誰かに何かを教えるなら、まず、自分が詳しくないと教えられないでしょ?」
「なるほど……」
一つの方法としては、有りかもしれない。
親が子供に、箸の使い方を教える時、まず、お手本を見せ、手を取り、コツを指で覚えさせようとする。
この場合、まず、僕達で小説の書き方を学び、AIに、押さえて置くべき、作り方のポイントやコツを伝授する。
僕はハツリさんを見る。
「でも、どうやって書けばいいんだろう? 僕たちは、普通の小説すら書いたことないのに?」
設楽が顎髭で、
「そんなの決まってるだろ? とりあえず、官能小説を読むんだよ」
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〈Andrоidは電気ウナギで夢精するか?〉
田舎の区役所に転勤して来た、お堅い公務員、
ある日、槇代は仕事帰りの河川敷で、ウナギ取りをしている、女子高生を目撃。
掴み所がないウナギを、柔肌の手で捕まえようとする、女子高生の手つきに、槇代の内に眠る性衝動が脈打つ。
「ヤダ!? ウナギがヌルヌルして気持ち悪い~」
槇代は目を細目、女子高生が掴むウナギを眺めていた。
透き通るような、女子高生の柔らかい手が、上へ上へと、のたうち逃げるウナギを捕まえようとする。
その手つきは、そそり立つ男自身を擦るかのように見え、ウナギの粘膜で覆われた、女子高生の両手は、ぬらぬらと輝く。
ウナギは、女子高生の手から逃れると、その勢いで無垢な谷間に入り込む。
「いやぁぁ!? ウナギが胸に入っちゃった」
槇代は静かに、上着の内ポケットから、Andrоidを取り出しカメラのレンズをかざし、シャッターを切る。
〈美魔女モデルは夜、熟れる〉
専業主婦の
不景気で夫の収入が不安定になり、家計支える為、彼女はモデルの仕事に復帰する。
だが、民恵の美しさに魅入られた、スポンサーの欲望は暴走する。
「ス、スポンサー!? これは何のつもりですか?」
民恵は背後から、屈強な男に羽交い締めにされ、恐怖する。
目の前には、舌をなめ綴りする、スポンサーが見据えていた。
「民恵さん。モデルとして売れたかったら、私の言うことは聞いた方がいい」
二人の男に挟まれ、民恵は恐怖する。
スポンサーが顎をしゃくり合図すると、屈強な男はスカート越しに、民恵のか細い脚に手をかけ、両膝を裏から持ち上げる。
「いやぁぁ! 離して!?」
”辱め固め”により、民恵は空中で開脚したまま、身動きが取れなくなった。
スポンサーは、開かれた民恵のスカートの中を、しげしげと見つめ、彼女に話かける。
「民恵さん……随分、熟れているじゃないか?」
「いやぁぁ……見ないでぇ……」
〈世界の射精から〉
初の海外旅行で、フィリピンに来た
酒場を出た彼は、友人達と、はぐれてしまい、怪しい現地人に声をかけられる。
現地人に案内され、風俗街に足を運ぶ。
その時の体験が忘れられない亀頭は、日本を捨て、リュックサック一つで世界を旅し、行く先々の風俗店を、制覇しようと志す。
これは、そんな一人の男の、性体験を
「アナタ? スケベ日本人!?」
現地のフィリピン人は、黄ばんだ歯を見せ、イヤらしく微笑む。
「私、スケベ日本人ノ好キナ所、知ッテルヨ! 付イテ来テヨ スケベ日本人!」
私はこの、うさん臭いフィリピン人を警戒するとともに、己の欲望を満たしてくれる、別世界に期待した。
そして、男に付いて行く。
現地人に、案内された歓楽街は、大通りに並ぶ町並みと違い、雑多で
ピンクや紫に輝くネオンは、町全体に桃色の吐息が、かけられたように見える。
卑猥な笑いを見せる現地人は、足を止め、イリュージョンを見せるように、手を伸ばし、歓迎する。
「私、スケベ日本人。大歓迎! 早ク、スケベ日本人。早ク!」
入り口には、四つん這いで尻を向ける、フィリピン女の、等身大写真が張られ、女豹のようなポーズを取っていた。
私の理性は、その尻の穴に、吸われるように奪われ、足は、ベルトコンベアに乗せられたかのように、軽やかに店へと進む。
店の門は、魔境に誘う口のように、私を呑み込んで行った――――。
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僕の隣で設楽が感心する。
「しかし、官能小説も読んでみると、奥が深いな」
仲間の共感を、得られた僕は、嬉しくなり語る。
「そうでしょ? 今のアダルトコンテンツは映像で見て、刺激を与えるが主流だ。
でも、古くから有る官能小説は、文字だけで読者の興味をそそり、性的想像を膨らませ、興奮させなきゃいけない。
表現をする上で、高度なテクニックが必要になるはずだ。
刺激なら、映像で見せた方が圧倒的にいい、圧縮された情報量が、格段に違うからね。
それでも、官能小説は、今だに廃れることも無く、継続的に市場に残っている。
まるで、官能小説は、江戸から続く、古典落語のようだよ」
「お前、とりあえず、古典落語に謝れ。官能小説と、並べた事を謝罪しろ」
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