4 異世界私立ハーレム女学院
「よし! 全員そろったし、ミーティングを始めよう」
ここで、改めて知ってほしいことがある。
現代の科学を発展させてきたのは、理論の一つである、量子力学だ。
量子論では、観測する存在が認識して、初めて結果が、表面化すると言われている。
この活動を、結果として現すなら、存在を誰かに、観測してもらう必要がある。
なので、まずは僕達の存在を、知ってもらいたい。
「出版社に持ち込んで、意見を貰ったんだけど、文章に、生きた感じがしないらしい
。 生々しさが伝わらないって」
僕こと、
AI研究部の副部長。
みんなからは、ハルとあだ名で呼ばれている。
最近の悩みは、パーマに失敗して、髪が鳥の巣みたいになったことだ。
「抽象的な意見だから、今後の研究に、どう組み込んでいいのか、悩みどころ何だけど……」
「生々しさ……それなら、良い物があるよ!」
門間の門を取って、部員はモンちゃんとあだ名で呼んでいる。
「有名ゲーム会社から、先月発売されたばかりの新作『異世界私立ハーレム女学院』をラーニングしよう!」
ぎょろ目のモンちゃんは、重度のギャルゲー、エロゲーオタクだ。
ズボらな性格からか、伸びっぱなしの髪で顔が隠れて、ギャルゲーの主人公のように見える。
自分の好きな事は、とことん語りたがる、少年のそのものだ。
「モンちゃん。ギャルゲーは台詞ばかりで、語彙も少ないのに擬音が多い。しかも、ギャルゲーの作品内だけで、通用する言葉があったりするから、AIのラーニングには向かないよ」
「ハル! 今度の新作は本当に神ゲーなんだ!?
異世界学校の校長に、転生した主人公、森友・カケルが女学院で、理想のハーレムを目指すゲームなんだ。
女子生徒とフラグを立てる以外に、政治家や自治体にお金を渡して、運営を有利に進める、賄賂システムが売りで、今までのギャルゲーと言うジャンルから、進化した作品だ!」
「モンちゃん。僕達はギャルゲーの進化を研究してるんじゃなくて、AIの進化を研究してるんだ。ハツリさんは何かある?」
年齢の割に容姿は幼さなく見えるが、土建屋の娘で、白黒はっきりした性格。
時にストレートな意見で、僕達の活動を底上げしてくれる。
苗字が言いづらいので、部員は下の名前で呼ぶ。
建築士を目指す、我がAI研究部のニューカマーだ。
「モンちゃん! 私もそのゲームやってみたいから、後で貸して?」
天真爛漫な一面を持つ反面、人の意見を聞かない側面が難点だけど……。
しょうがない。こいつにも聞いておくか。
「設楽くんはどう?」
AI研究部、部長。
設楽は、蓄えた
「生々しい文章か……それなら人間の経験、実体験を組み込むのはどうだ? AIのディープラーニングは、基本的に人間の行動学習と同じだ。
経験と復習。
人の行動原理から何を経験し、何を教訓としているかを、テンプレート化して、プログラムするんだ」
「なるほど、それはもっともだ。例えば?」
設楽は、この話題に持ち込むことを狙ったかのように、不敵な笑みを浮かべ答える。
「ここにいる部員の初体験、もしくは性体験を語る」
一同は、設楽の案に言葉を失う。
設楽の見解はこうだ。
「やっぱり、人ってヤツは、一番インパクトのある、経験からしか学ばないんだぜ?
人生に置いて一番、強烈で、一生記憶に残る経験って言ったら、やっぱ性体験だろ?」
哲学的な事を語り始めたと思ったら、やはり下世話な話に持ってきたか。
この男は何を隠そう、学部では“ガチクズの設楽”として有名だ。
ワイン色のテーラージャケットから覗く、白いTシャツは、初めて見る者を引きつける。
そこには二人一組で、小人が何体も描かれており、しかも、一組ずつで構成されたカップルの小人は、裸で絡み合い、シャツ全体を見ると、男女の夜の組み手をしるした、四十八手の一覧だったのだ。
なんて不謹慎な男だ。
大学という、高度な知識を学べる場所に相応しくない格好をしている。
部員が去っていくのは、部長の彼が原因。
部員に
彼にとって、理系の学生は、関節を捻じ曲げてもいいと思える、おもちゃの人形のような物だ。
この男に弄ばれて、何人の部員が去ったことか……。
部長がAI研究に対し、真剣に取り組まないので、実質、部をけん引しているのは、僕やモンちゃんだ。
設楽は爽やかな笑顔を作ると、さっそく獲物に食い付く。
「てことで、まずはハツリちゃんからぁ~。ねぇ、初体験はいつ? その時の経験はどうだった? 気持ちよかった? 痛かった?」
ハツリさんはにっこりと笑い、表情を作ると質問に応じる。
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