第87話「ニャンダーの冒険4!」
全長2m。全高1.5m。四角い箱型、白く光沢を発するそれは明らかに金属や木ではなく、人類が加工したであろう特殊な素材であった。その巨大な人工物がダンジョン内を浮遊していた。
「……ニャンダー師匠。それはなんですか?」
「え!?今、集中してるから! 声かけないで!」
『前方にノーマルモンスター発見。迎撃行動に移ってください』
不幸にも現れた5階層のコボルト。
「うがあああ! なんで姿勢制御から移動まで全部手動制御なのよ! ていうか、外部からモンスター感知できるならあんたも制御手伝いなさいよ! それよりも! なんでこんな大変なものにサポートシステム抜きで運用させるの! もう!」
なんだかんだ愚痴を言いつつもニャンダーは右腕部である白い砲塔をコボルトへ向ける。
『魔法力砲充填完了。いつでもいけます』
「知ってるわよ! モニターに出てるんだし! もっと違うところサポートしなさい!!」
『人形王からの言伝を伝えます【ファンタジー世界でサポートAIとか……。ぷっ、現実みろよ】です』
「この!!!!! この装備自体オーバーテクノロジーじゃない!! せめて脳波で制御とかつけなさいよ!」
『人形王からの言伝を伝えます【なんでも指先1つでできるとか、ファンタジーなめんなよ!】です』
「くぞ! 絶対リアルタイムで見るわね!!!!」
ニャンダーの絶叫と共に大型魔法力砲が強烈な光を放ちコボルトを跡形もなく消し飛ばし、その後ろのダンジョンの壁面に当たり拡散される。残されたのは焼け焦げたダンジョンの壁面だけであった。
『右魔法力、冷却を開始してください。しないと再装填されません』
「あんたがしなさいよ! なんで情報見れてるのに制御サポートしないのよ!」
とか言いつつしっかり操作して魔法力を冷却するニャンダー。
モルフォス達はその姿を唖然と見ていた。
因みに、白い四角い箱の前面にニャンダーがこの箱を装着する形で嵌っており、白い四角い箱の後方にはニャンダーの元の世界での弟子であり、本人曰く人形王の秘書とその恋人の2人の美少女が何故か黒子の格好で控えている。
尚、弟子の方はヘッドセットにグラス型のモニターで状況を把握しニャンダーとコミュケーションしている。もう1人の方はその後ろでリヤカーを引いている。載せているのは白い四角い箱の部品であろうもの達であった。
『前方の曲がり十字路の左右に黒いモンスター反応。拠点制圧型ニャンダー出撃願います』
「拠点制圧型ってなんだーーーーーー!」
怒りのニャンダーが左腕をふるう。間違ってボタン押したようだ。
『集束型魔法力ミサイル、ファイヤー』
「いま、あんたきっぱり【ミサイル】っていった!」
ニャンダーの叫びと共に左の肩部が開き、細長い形の長方体の物体がするりと前方へ放たれる。それは決して早いと言う速度はないがブースターでしっかりと加速され進む。そして十字路にさしかかると全方位に小型魔法力ミサイルをまき散らす。
「ぎゃぎゃぎゃ(撤退! 撤退! 撤退!)」
散々手間取った黒いモンスター達があっさりと引いていった。
『あ、回収お願いね。あれ、代わりないから』
『えー、面倒臭い……』
リヤカーを押していた美少女がゆっくりと動き出したかと思うと壁にめり込んでいた長方体を回収していつの間にか戻ってきている。
『師匠。物資補給がありますので一旦停止願います』
「……そう、色々疲れたわ……」
『ニャンダー本体分離』
ニャンダーは違和感を覚えつつもその場で大の字に伸びる。細かな操作の連続で精神的に極度の疲弊をきたしているようだ。
その隙にとリヤカーを押していた美少女がニャンダーが分離されその場に浮遊している四角い箱の各所を開いて手早く部品交換などを行っている。
そこでようやくモルフォスが弟子に質問を投げかける。それはそうである。完全に蚊帳の外であり。彼女らからモルフォス達に自己紹介すらなく。黒のうっすら見える素顔が美少女なこと以外全くの不審者である。ニャンダーを導く事は神から命じられたことであるので必ず成し遂げなければならない。故にこのおかしな状況を理解しなければならない。
「あのー。貴女方はどちら様でしょうか……」
今更な質問である。
「私たちは黒子! 拠点制圧型ニャンダー運用に関するサポート。いないものと思ってください。あと、集団戦闘になったら参加してくださいね。そのあたりのデータも欲しいので」
モルフォスは『データ』という言葉に思わず弟子が片手に持っている『試作武装評価表』が気になって仕方がなかった。あと、あれだけ後ろからニャンダーをいじっているのに『黒子』はないのではないかと思っていた。
((((黒子というより黒幕がぴったりくる))))
正直な感想だった。しかし、これまで撤退を余儀なくされていた黒いモンスター達を撃退できた。これはモルフォス達にとってもよい状況である。
「ちょ! あんた! このブーツと背中のランドセルは何なのよ!」
ニャンダー再起動。
『高機動型ニャンダーです。拠点攻略型で拠点防衛機能を沈黙させたのちに、エースを叩く用のぶそうです』
「なんでヘッドセットで喋ってんのよ! 目の前に居るんだから目を見て話しなさい」
『自分、黒子なんで。いないものとして扱ってください』
「おまえーーーーー!」
モルフォス達は『まぁ、進んでるからいいか』と考えることをやめた。
こうして、ニャンダー達はゆっくりだが着実に階層を進んでいった。
※書籍化2巻発売しましたので、仕事の合間で申し訳ございませんが頑張って更新していきます!※
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