第37話「刺身を食べられないモンスター達」
本文前の駄文開始-----------------------
鱈「こんにちは!」
タ「ちっす!」
ばきっ
鱈「こんにちは!」
タ「こっこんにちは!」
鱈「今日からレギュラー? きっと準レギュラー、気分次第で一発キャラ! として頑張ってもらう事となりました。よろしくね!」
タ「えーーー、マスコット枠って聞いたのに! それはねえっす」
鱈「だって、10人に聞いたら10人とも『一発屋』ていわれたので」
タ「でもそこに深い事情があって!」
鱈「(考えてます)」
タ「ほら設定とかも凝ってる…よね? たぶんそうだよね?」
鱈「(深く考えてます)」
タ「いあいあいあ、こんなところで持ち上げるくらいだし」
鱈「(なんでこんなことしてるのだろうかと首を振ります。そして『朝ごはん作らなきゃ♪』とかやり始めます。もはやこの場に興味はありません)」
タ「新キャラ! 大事に育てようよ! …あ、この鱈、キャラクターの使い捨て常習犯だった!!」
鱈「ということで本日、一発屋じゃなくて、使い捨て!、でもなくて謎のキャラ投下します! あきたら2話で消える! 奴の運命はどっちだ!!(笑)」
タ「(笑)じゃねえ! 皆オラに存在力を! そして応援コメントを! おい!コメントに『消えろ』とか書くな! まて、ここで終わるのか! なんの活動報告だ!」
本文前の駄文終了-----------------------
ダンジョン都市コムエンドの西には山々が広がっている。
東に進めば大穀倉地帯。そちらを超え更に進むと漁業で有名な街がある。
西の山を超えるとアユムたちの故郷へと続く。
尚、コムエンド南西に広がるの大森林はモンスターの潜む森だった。
大森林は深部に危険地域である。
浅部に関してはダンジョンの5階層までと同様に低位冒険者の修練の場であった。コムエンドにおいては5階層までダンジョン産業の場となっており、オートメーション化した作業場である。
そんな中たまにレアモンスターとなるモンクコボルトなど出現する。そちらに対応するため冒険者組合は実戦感覚を磨く修練の場として、全冒険者に定期的な大森林浅部での戦闘訓練を推奨している。
増長してしまったとフィアルは反省していた。『いや遅いよ』とその後ろでヒルメは思っていた。
皆さん覚えているだろうか?彼らは1巻でアユムにモンクコボルトに襲われているところを救われた冒険者の3人である。
あれから組合に戻り自分たちの未熟を反省した。そして力不足を痛感した彼らは懇意こんいにしている先輩冒険者と相談の上、修行の為大森林浅部に挑むこととした。しかして彼らは失敗から本当の意味反省していなかった。
ダンジョンでの彼らの失敗は、『先輩冒険者パーティーとのペアを組んで挑むことをしなかった』ことにある。そもそもコムエンド以外の冒険者組合でもそうだが、冒険者とは慎重である。そして先輩冒険者たちは自分たちの苦い失敗経験から、後輩冒険者が慎重になることを歓迎している。依頼すれば、相談すれば、募集すれば、喜んで組んでくれるのだ。そこで学ぶ事は多い。しかし彼らは今回もそれをしなかった。更に。
「ルーカスの代わりなんていない!」
ハーティの意見に男2人があっさり押し込まれて、なんと3人で森に来ていた。
『パーティメンバーを増やさなくとも先輩冒険者と組むべきだ』と主張したヒルメは無視された。何とか都合付けようと動いたが、参加してくれるように話をつけたパーティに対してヒルメが気付いた時には既にフィアルに丁重にお断りされていた。
その結果、今森の中で迷っている。
日も暮れようとしている。コムエンドの方向もわからない。
かといって東に行けばいいかと言うと森の危険地域がどこになるのかわからない状況で迂闊には動けない。夜になれば待ち受けるのは凶暴な夜行性モンスターだ。控えめに言って絶体絶命だ。
「……」
主張できない自分を呪うヒルメはふと視界の端にうごめくものを見つける。
すぐさま音を立てない様にゆっくりと弓を構える。そのヒルメに反応してフィアルは剣を抜く。ハーティは遅れて杖を構える。
木々の間を掛ける抜ける風すら『魔物が近づいているのではないか』と彼らに緊張感を与える。緊張の時間は何もしなくても彼らから残り少ない体力を徐々に奪って行く……。
やがて恐る恐る草むらからそれは出てきた。
こげ茶の体毛、目の周りの毛が黒くイヌ科の動物。体長はおおよそ60cm程度だ。尻尾は短く愛嬌がある。
そう、タヌキだ。
通常タヌキは警戒心が強く人間には寄ってこない。
「キャウ」
そのタヌキは一吠えするとゆっくり3人に近付いてくる。
そこに違和感を抱いたのはヒルメだけだった。ヒルメはフィアルとハーティの、冒険者として致命的に足りないものをここで認識した。……そう、危機感だ。
ハーティはタヌキに不用意に手を差し伸べる。
フィアルはすっかり剣を鞘に納めてしまった。
ヒルメは気付いていた。浅部とはいえここはモンスターが跋扈ばっこする大森林。
そこにタヌキの様な生物が生き残れるはずがない。
なのにこのタヌキはここに居る。
平然としている。
「可愛いこの子。手をなめた」
「マジか、ていうかカバン背負ってるぞこいつ」
ヒルメが止めるのも聞かずにフィアルはカバンを開くと、ヒルメ達では逆立ちしても狩れないモンスター、ワイルドキャッツの牙が10本入っていた。どれも血に濡れている。
危険だ。このタヌキ。
だが、ヒルメは同時に思った。すでにタヌキの領域に自分たちはいる。ここはすでに死地だ。
「キャウ~、キャ、キャ、キャウ~~~~」
ハーティが撫でると嬉しそうにしながらも、タヌキは何か必死に訴えてきている。
手を振り、足を振り、カバンを差しているように見えたり、葉っぱをかんでみたり何か必死だ。
「タヌキチちゃん、ダンス可愛い♪」
「多芸だな。カバン持ってたことといい、誰かのペットなのかな?」
緊張感のない2人に影響されたのか、ため息をつきつつヒルメもタヌキと向き合う。
「キャウ」
お前話が分かりそうだな。と言っているように見えた。
「いいよ、伝えてみて」
「キャウ!」
タヌキは喜んでヒルメにカバンを差し出す。
「これと交換してほしいのか?」
「キャウ!」
喜んで駆け回るタヌキ。どうやら正解のようだ。
そして葉っぱを必死に食べるしぐさをする。葉っぱは食べている様子ではない。
「食料と交換してほしいの?」
「キャウ!」
喜んで駆け回る正解のようだ。
まとめると『ワイルドキャッツの牙が10本と食べ物を交換してほしい』という事だ。
「ごめんよ。僕たちも街に戻らなきゃ食べ物がないんだよ……」
タヌキのおかげで一時、自分たちのみじめさをさを、再認識させられたことに感謝しつつもヒルメは自嘲気味に言う。
「キャウ!」
するとタヌキは器用にカバンをしまうと背に担いで走り出す。
「あ、タヌキチちゃん」
タヌキは少し進むとこちらを振り替えり吠える。
「キャウ! キャウ!」
こっち来いと呼んでいるようだった。
フィアルとハーティとヒルメはお互いの顔を見合い同時に頷く。
特にハーティは楽しそうだ。
タヌキを追いかけ、ヒルメ達は森を駆ける。そして日が落ち切る前に街道に出た。北東を見るとコムエンドの街が意外と近くに見える。
「キャウ! キャウ!」
どやっ! とばかりにタヌキは自慢げだ。
そしてコムエンドの街へ行くようにヒルメのズボンを引っ張る。
「ああ、食糧だったね。いいよ換金して買ってあげるよ」
タヌキは勢いをつけてヒルメの胸元にダイブする。ヒルメは優しく受け止めるとタヌキを抱きかかえて街へ歩き出した。途中フィアルに促されてタヌキをフィアルに抱かせる。彼らは先ほどの窮地をあっさり忘れ、能天気なままコムエンドにたどり着いた。
門でのチェックも少女の腕にだかれたタヌキなど危険視されない。
こうしてまんまとタヌキことタヌキチはコムエンドに潜り込んだのだった。
さて、そのタヌキ。お分かりの様にただのタヌキではない。
軽く心の声で自己紹介を聞いてみよう。
(僕は元人間! スーパーエリートタヌキだ! まぁ今はタヌキチって名前でいい! 勿論元人間だから女の子が好きだ。だが、メスタヌキの方がもっと大好きだ。さっきも森で見かけたメスを尻を追いかけたらモンスターに遭遇しちまった。颯爽と僕の魔法の尻尾で退治して振り蹴って『お嬢さん御怪我は?(キラリ)』ってやったらそこにメス狸はいなかった。カムバックカワイ子ちゃん! なんか頭がフラフラするから休んだあとトボトボ歩いていたら第一村人遭遇だ!)
一人語りである。ちなみに、そんなところにタヌキのメスなどいない。メスに見えたのは幻惑系キノコを何の警戒もなく食べたからである。モンスターは実際に居たので結果的に運が良かったといえる。このタヌキ幸運とである。
(そして僕は今、金髪のカワイ子ちゃんの腕の中に居る。ちょっと胸が小さいが女の子ってのは柔らかくていいな!)
セクハラタヌキである。
(街に入ると意外とでかい街なんだよこれ! そして僕はそこを歩く! お、ひょろいのが牙を換金してくる。そうだ! いいぞ! 高くしてくれ! そして食い物プリーズ! 塩が欲しいのだ! 元人間だから生肉以上にうまいものがあるのを知っているのだ! 森はつらい)
ヒルメが換金作業をしているのを待つ中、タヌキチはハーティに抱かせれていた。
自我に目覚めてこれまで、タヌキチは親の顔を知らない。仲間の顔を知らない。人間とは言葉が通じない。近寄ると狩られそうになる。折角見つけたメスも幻まぼろしだった。そして何よりずっと野生と言う緊張感の中に居た。
それが今人に頼ってもたれかかる。ゆとりの時間であった。
眠気に誘われそうになるのを我慢しながら、タヌキチの耳には冒険者たちの会話が入ってくる。
タヌキチは目覚めたらタヌキ鍋になるかもしれないので、眠気覚ましにその会話に耳を向ける。
「俺たちこのあいだ10階層まで行ってきたぜ」
「マジか! すげーな。10階層っていえばイックンか」
「ああ、あの似非西部語のイックンだ。魚とってきて捌いて出してくれたんだよ。煮込みも美味かったがあそこで冷凍して殺菌した後にだされた刺身っていう神王国料理がもう美味かった! あそこに調味料を地上から持っていってよかったよ」
「くっそ、俺たちも戦力集めていきてーな」
「あ? お前ら10階層の話なんかしてるのか? 目指すなら15階層目指せ。あそこはパラダイスだぞ。飯はうまいし可愛い動物とモンスターがいるからな。風呂も巨大化してレジャーランドだ。何よりあそこにはアユムがいるからな。間接的とはいえモンスターや動物と会話ができるぞ」
タヌキチの耳がピクピクを反応した。
「アユムはなんでか知らんがわかるみたいだ。俺もハンターウサギのぴょん太とモンスター肉談議で盛り上がれたからな。楽しかったぞ」
「師匠ずるいっす。俺も下働きするから連れて行ってほしいです」
「がはははは、お前ら自力で行け。目標にして自分を磨け!」
タヌキチが重い瞼をゆっくりと開くと目の前にはフィアルとヒルメが居た。膨れたカバンと金貨が入っている布袋を持っている。
「これ君の欲しがってた食料ね」
「これは余った金貨だ」
ヒルメがタヌキチにカバンを担がせるとフィアルは本当にわかるのかと懐疑的な表情で布袋をタヌキチの前に差し出す。
タヌキチは布袋を前に首を横に振るとハーティの膝から降りる。
そして彼らに向き直ると小さく頭を下げる。
「タヌキチちゃん?」
ハーティは手を伸ばしたがタヌキチは入ってきた冒険者と入れ違いで冒険者組を出ていった。
目的地は……。
もちろん、噂のアユムの所だ。
(動物の言葉がわかるなら僕が元人間だってわかってくれるはず!)
ただのタヌキなら苦悩しない内容だが、タヌキチは特別だった。
特別なタヌキ、タヌキチはダンジョンに向かって駆ける。
運命の出会いが待っている!
そう確信を抱きながらタヌキチは駆け抜ける。
――――――――
タヌキチ「キャウ(ども! タヌキです。主人公のペット枠ねらってます!)」
アームさん「がう(先輩に挨拶せんか後輩……)」
ぴょん太「プゥ(アーム、そんなに怖い顔するな。おう、おめーが新入りか。俺がここのボスぴょん太だ。よろしゅうのう)」
タヌキチ「キャウ(はい、自分タヌキチって言います! 宜しくお願いします!)」
その晩、そっと1品を献上したタヌキチだった。
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