第6話「街に戻ってみる。いや、種芋が欲しいんです!」
「がう(大丈夫か? 忘れ物無いか? ハンカチ持ったか? おやつ持ったか? この先モンスターいるし諦めないか? いつ帰ってくる? 夕方? それとも明日?)」
微妙に体を揺らしながらアームさんはどこかの過保護おやじの様な事を言うがアユムに苦笑いさせるだけである。
「ボウ(落ち着け駄ネコ。明日帰ってこれるわけなかろう。1週間ほど見ておけ)」
オークの王様、権兵衛さんは冷静に言うが手にしている槍の穂先が地面を向いている。普段なら逆のはずなのに。
「がう(だって、アユムが悪い人間に誘拐されたらどうするんだよ?)」
「ボウ(落ち着け。1週間で戻ってこなければ討って出ればいいだけの事)」
権兵衛さん落ち着いて。
「ボウ(黙れ世界の声)」
「がう(大人しく状況説明だけしてろ童貞)」
ちっ、駄ネコに子ブタが……(ボソ
「ボウ(そう言う事でアユム1週間後の夕方までに戻らなければ誘拐とみて街まで行くから)」
「がう(人間社会怖いよ? 今からでも帰っておいで……)」
もうこの2匹についてキャラがどうのこうの言うのはやめることにする。もう末期だ。
「でも、ここで行かないともう調味料が……」
「がう(くっそ人間どもめ! そんな卑劣な罠を!!!)」
「ボウ(征服して手に入れるのも……)」
君たち存在意義はどこに行った?
改めて言おうダンジョンモンスターとは世界の調整機能としてのダンジョンが生み出した魔物である。その存在意義は、その場に存在すること並びに冒険者と戦う事にある。
無駄に殺して冒険者を減らしたり、ましてや征服など言語道断である。
その為、外部のモンスターと違いダンジョンモンスターには『自我』と言うものが存在しない。あえて言えば長く放置されたモンスターが殺人衝動に駆られ『暴走』することがある。権兵衛さんやアームさんなどフロアボスと呼ばれるモンスターはそんな暴走前・後のモンスターを狩り、自分の担当領域を管理している。ダンジョンモンスターの存在意義とは端的に言うと『ダンジョンで冒険者に狩られる』その一言に尽きる……。
「じゃ! 美味しいもの仕入れてくるね!!」
「がう(やだーーー、……美味しいもの……いってらっしゃい! ……でもやだーーーーー)」
アームさんがアユムの方に顎をのせて泣きじゃくる。権兵衛さんも開いているアユムの肩に手を置き優しく語りかける。
「ボウ(畑の管理は任せておけ、保存できるものは処理して保存庫に置いておこう)」
「アームさん、鍋を買ってくるから煮込み料理が作れるようになるよ!」
アームさんの頭を抱え込んで優しく撫で上げるアユム。どっちが子供かわからない。
「権兵衛さん。よろしくお願いします」
そう言ってアユムは5階へ続く階段を駆け上がっていった。
「がうぅぅぅぅ!(知らないモンスターについていっちゃだめだよーーー。人間もねーーーーー)」
親バカと言うかバカ親。むしろくそネコ並びにバカ猫である。
「ボウ(さぁ、いくか)」
アームさんは名残惜し気に5層に続く階段を眺め続けている。
「ボウ(……お主、実はこのまま帰ってこない方が良いとか考えているのであろう?……)」
ここで槍の穂先が反対であることに気付いて権兵衛さんは何事もなかった様にくるりと槍を回す。
「……がう(……ああ、俺がいつ暴走するかわからんからな……そんな奴の隣にいるより同族と一緒の方が幸せだろう。……でも帰ってきてほしい……)」
権兵衛さんは飽きれた様に額に手を当てる。
「ボウ(そこは正直に『帰ってきてほしい』とだけ思っておけ、お前が暴走したら俺が始末してやるから安心してアユムを隣に置け)」
ちょっといい雰囲気お2人! これはカップル成立の予感!!!!
「がう(ちょっと世界の声、貴様が執筆した『闇のブラック黙示録』とか俺手に入れたんだけどさ? 朗読しようか?)」
「ボウ(ほほう、1年A組世界の声って書いてあるな…幼い頃の過ちだが懐かしい記憶だろうて。どれ俺も朗読してやろう……)」
大変申し訳ございませんでした!!!!
という事で場面転換します!
……お二人ちなみにそれはどこで手に入れましたか?
「「がう・ボウ(白い空間で軽い男がくれた!)」」
創造神様か……覚えてろよヒゲ爺。
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