第十一話 ねぇねぇ
三番目に通った小学校は、なんだか暗い色だった。
学校の色が黒っぽい訳ではなく、空気が暗い。
光はちゃんと入ってきているのに、廊下の端から端までの直線も見渡しにくい学校だった。
1学年2クラスの小さな学校で、1年生から6年生の縦割り班があり、何かと学年関係なく班でのイベントが多かった。
それ故にか、学校全体で仲がよく、班の1年生は私におんぶをねだってばかりだったりとのんびりとした雰囲気の学校。
だからこそ、薄暗い空気を持つ学校が不思議だった。
たしか、最初は図書室。
縦割り班で、1年生と2年生にじゃれつかれながら掃除をしていた。
「ちり取り持ってきて」
というと、楽しそうに駆けて行く。
本棚の連なる奥まった場所でごみをかき集めていると、
「ねぇ」
幼い声がする。
他の子が来たのかと思わず振り返るが、誰もいなかった。
違う人に言ってたのかな?とまた箒を動かすと、
「ねぇ、ねぇ」
今度は近くから声がする。
すぐ後ろから。
もう一度振り返る。
居ない。
誰かふざけて隠れてるのかもしれない。
取り敢えず、ごみは集めたし、チリ取りまだかなぁ? と待っていると
「ねえねえねえねえねえねえ!!」
近い。
これは、違う。 生きてないやつか。
駄々をこねるような可愛らしい幼い声。
このときの私は、ああ困ったなぁ。位の軽い気持ちだった。
「おねーちゃん!」
「もってきたー」
キャッキャッと楽しそうに戻ってきた1、2年生にお礼を言うと照れくさそうに笑って掃除を終わらせた。
班の皆が掃除を終わらせたことをチェックして、図書室の外に出る。
「ねえ」
振り向かずにバタンと扉を閉め鍵をかけた。
その日から、私は幾度も学校の様々な所で声を掛けられる。
「ねえ」
私は振り返らない。
この日から後ろから呼び掛けられても無視をする癖ができてしまった。
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