第十話 中の人

 私には、中の人がいる。


 私自身よくわかってない。

 自分の感情と別の感覚があると気づいたのは中学生の最初。

 声が響くときもあれば、言語を持たない雰囲気で伝わることもある。


 未だ、この正体は不明だ。

 私なのか、私じゃないのか、妄想なのか病気なのかと色々悩んだこともある。

 しかしながら、大雑把な私は『害がないならよくね?』で済ませている。


 大抵は警告をしてくれる。

 これ以上この番組(心霊スペシャル)は見るな。とか。

 この先は今日は通らず回り道しろ。とか。


 人の好みもあるようで、

 私は基本的に嫌い!と人を思うことが無い(興味ないだけかも)

 でも中の人は、こいつ嫌い! もあれば、こいつしゃーないやつだけど助けたって。って伝わることもある。

 自分の意にそわなければ放置してるけど。


 そんな中の人、普段は静かなのだが、猛反対してきたことがある。

 始めての彼氏と付き合った時だ。

 その時は私も色々壊れていて、今になれば何故あれと付き合ったのかと思うほど悪い男だった。

 警告を無視してでも、私は誰かに必要とされたかった。

 身体はどんどん痩せていき、当時の写真は死人のように青白く影が薄いようだった。

 中の人の反対を無視し続けると、次第に気配が薄くなり、存在を忘れる。

 その頃辺りから私は病気になり、十年近く闘病生活を送ることになる。

 件の彼氏と別れた後、一年ほどすればまた中の人の気配を感じるようになり、声も聞こえるようになるのだが、

 あの男は何かを鈍らせるものを持っていたと思う。


 あの男に連れられてある神社に行った時、中の人はヤダヤダ止めてって微かに言っていた。

 その神社で感じたのは、出ていけ、この男は渡さない。だった。

 きっとあの人とあの神社の繋がりはまだ続いているのだろう。


 さて、中の人の話に戻すが、中のって言っていても、中に居るのか、横にいるのか後ろにいるのかは定かではない。只心に響くので中の人と呼んでいる。

 この人、案外お茶目さんで友人と会話しているときに、突っ込みを入れてきたり、笑わせようとするときもあって我慢する私の苦労よ……。


 あとは、友人が●●買おうと思ってるんだけどー、でも◇◇と迷っててーとか言うと、◇◇がいーよ!と訴えてくる。

 なので◇◇にしたら?と助言をしたらば、後日友人から●●にしなくてよかった!●●は◇◇よりうんたらかんたらで!と喜び勇んだ報告がよく来る。


 日付指定も何故かある。

 意味がわかる時と意味がわからない時があるが、まぁ、損はしない様なので可能なら実行又はおすすめしている。

 たまに気味悪がられる(笑)


 あの、新しいゲーム機買うか迷ってるんだけど、教えて中の人……

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