第八話 りゅう

 転校した小学校には何か偶に視界を横切りはするものの、前の学校程に恐ろしいと感じる事は無かった。

 そんな日々を繰り返し、いつの間にか卒業していたのだが、これと言って感慨もなく、流れとともに中学校に進学。

 小学校同様、新しい中学校で特にここも違和感がない。

 寧ろ、段々と影は薄れていきこのままもう影に怯える事がなくなるのだろうと思っていた。

 そして中学二年の進学時に、虚しくも親の事情でまた転校することになるのだった。



 新しい土地は幾分都会的で、他の地方からの転移者が多く馴染みやすかった。

 中学校は意外と歴史が有り、建て替えてあるものの剥き出しのコンクリートが汚くて嫌いだった。

 学校の横に川が流れ、普段は浅いのだが雨が降ると驚くほどに増水するため高い柵に囲まれている。

 学校を包むようにぐるりと木が植えてあり、外からはあまり校舎が見えない。

 なんとなく不気味だ。


 影を見ることが殆どなくなっていた私は特に気にすることもなく通っていたのだが、雨が降る前に決まって視るものがあった。


 形容し難い、気のせいだと言われると否定できない。


 は何時も気持ちよさそうにウネウネ泳いでいる。空を。


 薄く、水色のような灰色のような半透明のものが遠くだったり近くだったりとにかく気まぐれに現れて『ふっふーん』とでも言っていそうにチラチラとウロコが光る。

 龍、と言うものなのだろうか?

 空を泳ぐソレを視ながら、今日傘持ってきてないやと授業そっちのけで視えなくなるまで眺めていた。

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