第五話 奇妙な女1
時間は戻り、おそらく幼稚園児の時。
コレは書いていいのか迷う程に私に恐怖を押し付けた。
書いている内にまたあの女がやってくるのではないかとオドオドしている。
影響があるか分からない。自己責任で読んでいただきたい。
◆◆◆◆
兄はわんぱくな子で母が隣でせっつかないと、一切宿題をやらない困ったちゃんだった。
子供部屋でいつものように兄が逃げ出さないように監視する母。
私は何もすることもなく隣のリビングでテレビを見たり子供部屋を覗いたりウロウロしていた。
バン!
ベランダの窓が鳴った。
バンバンバン!
どんどん大きくなる音。
音がした時から反射で音源を見るが何もない。
ぼーっと見ていた。見るしかできなかった。
ガタガタと窓が震え、夜中にライトを早く動かしたような光線が右から見え始める。
グジャグジャ回って左に去ると、黒い糸が少し発光して右から流れてくる。
黒い糸は次第に量を増やし、それが髪の毛だと気づく。
女が笑ってる。
確りと、狙いを定めて、私を見ている。
白い肌、赤い唇。裂けたように大きく笑う。見開かれた瞳は、血走っている。
窓を叩く手。
細く長い指。
怖い。
もう頭の中はそれだけ。
怖い。
見つかった。
私を確実に意思のあるような目で見てきたのは初めてだ。
影はいつも虚ろだった。祖父でさえも。
怖い、逃げたい、動けない。
来るな来るな来るな……
私の意識は少し飛んでいたようで、ハッとするともう窓を叩く女は消えていた。
大きく息が抜けていく。
どうやら呼吸も忘れてたらしい。
手にはベタベタと汗が滲んでる。
私は急いで母と兄のいる子供部屋へ入った。
「どうかしたの?」
そこには相変わらず机に向かっている兄と見てたであろう母。
母の意識が私にいった隙をみて机に隠していたらしい菓子を素早く含む兄。
いつもの光景。
……あの音すら聞こえてなかったのか。あんなに煩く激しく叩かれていた窓の音すら。
夢なのかもしれない。夢だと思いたい。
だって、あんなに怖いものははじめてだ。
「なんでもない」
そう呟いてリビングに戻る。
もういない。ほら、やっぱり夢だった。
夢であればよかった。
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