第15話 『で、投資するっすよ!』
と、突然話題を変えた。小野寺はニコニコしながら、
「ああ、それはありがとうございます。そうしましたら、こちらの書面をお持ち帰りになって、よく読んでいただき、問題がないようでしたら
と、カバンから書類を取り出すと、テーブルに並べた。が、シゲルは全く理解していない。
「ああ〜と〜、そんでこれをどうするって?」
「ええ、ですから読んでいただき、ご承諾いただけるようでしたら、署名捺印後、こちらに送っていただき、入金。それでストラテジック・パートナーとなっていただき、ディヴァイスをお送りすると…」
「ああ〜、ストナリニパートナーがデバガメで…」
「とても簡単に言いますとですね、
『これ読む>良ければ名前書いてハンコ押す>こっちに送り返す>お金振り込む>お友達になって会社を運営>オマケも貰える』、それで皆んなで儲けましょう! とまあ、そんな所ですね」
「ああ、儲けましょうね! んで、え〜と〜、これをどうするって?」
「もっともっと簡単に言うとですね、
『これ読み〜の、名前書き〜の、ハンコ押し〜の、送り〜の、お金を払い〜の、一緒に大儲け〜の』そんな感じです」
「そうか! 一緒に大儲け〜の!ね。今度は良く分かった。んじゃ、これとりあえず貰ってくっす」
「よろしくお願いします。良い返事をお待ちしていますよ!」
なんとなく話にピリオドを打ったような小野寺の言葉に、シゲルは書類をバッグに入れながら立ち上がり、
「それじゃ、帰って仲間と相談してみるっす。あ、リコの方もよろしく。それじゃあ、オレはこれで...」
と、喫茶店を出て行った。リコもそれを追うように立ち上がると、
「あ、あの、よろしくお願いします」
と一礼しながらシゲルの後を追って出て行った。
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それを見送った小野寺と上森は、残ったコーヒーを飲みながら一息ついた。
「大丈夫そうですかね?」
「ええ、いいんじゃないでしょうか? 小野寺さんの強引な英語攻め、面白かったですし」
上森は笑ながら言った。
「いや〜、なんか嫌な奴を演じちゃったな。英語の『V』を『ヴィ』って言わないと気がすまない奴とか張り倒してやりたくなりますよね」
「ヴィデオとか?」
「そうそう、ヴィブラート」
「ヴァレンタイン?」
「ヴァンパイアとか...」
「確かに。でもターゲットは小野寺さんの言葉に完全に飲まれてましたからね。こっちの勝ちだと思いますよ」
「恐れ入ります」
「これでお金を振り込んで貰えれば、こちらが騙されたフリをして渡したお金をも戻ってくるわけで...」
「でも50万円と80万円だと10万円多いですよね?」
「ま、その辺は諸経費ですね...」
「なるほど、しかしリコさんの分の50万円は授業料ですから、お金を取り戻した事にはならないのでは?」
「ええ。でも養成校の生徒さんの半分以上は学費は払っても続かなくて脱落しちゃうんですよね。こちらの落ち度が無ければ、学費の払い戻しの必要はありませんから、それで結構儲けが出てしまう... ま、ここだけの話しですが...」
「ああ、確かに! 教えてても途中から来なくなっちゃう生徒さん多いですよね。お金を勿体なくないんですかねえ?」
「ま、本人の自由ですし... それにリコさんが本当に実力を付ければ白三プロで仕事をしてもらえるわけで、そうなると我々には利益が出るので、それはそれでありですから。どっちにしても損はしないという考えです」
「なるほどね。いい仕組みですね」
二人は談笑しながら残ったコーヒーを飲むと、喫茶店をあとにした。
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