第13話 『サーバー監視中!』


「上森さん、入って来ましたよ! 多分ターゲットです!」


 翌日の午後、自社サーバーの管理プログラムを眺めていた斯波がオフィスにいる上森を呼んだ。


「ほう、このリストに出ているのがそうですね?」


 足早にやって来た上森は、斯波の目の前にある Mac の画面を覗き込みながら聞いた。


「そうです。この『フィジカル・ロック・ソリューションズ.com』のアドレスは、一般には告知していませんから、知っているのは私たちのような関係者か、昨晩、小野寺さんが名刺を渡したターゲット達以外にはいません。今、その関係者はアクセスしていないわけですし、IP アドレスから判断しても、これはターゲットの誰かって事だと思います」


「やはり、昨日の小野寺さんの演技に興味を持ったようですね。さすが次期白三プロを背負って立つ俳優さんの演技!」

「彼ら、小野寺さんの言葉に随分興味を持ってたみたいですからね。サイトのあちこちのページを行ったり来たりして中身を見ていますよ」


「フム、いい傾向だな。詐欺で集めたお金で遊ぶだけじゃなくて、資金運用をしてさらに儲けようってわけですかね?」

「う〜ん、ちょっとムカつきますよね!」


「ええ、でも昨日のレストランでの会話を聞いてると、そういう頭はなさそうですよねえ」

「確かに確かに! FaceBook で散財さんざいした話を自慢気に書くあたりからしても、小物感は強いですね」


「そうです。やはり、ここはひとつ投資を通して、彼らにも世間の厳しさを身をもって体験してもらいたい所ですよね」

「でも、なんだか私たちの方が彼らを騙してるみたいですよね」


「いえいえ、この会社もサイトも法律的には問題ないですから大丈夫ですよ。会社の方は一般には告知していませんが、白三プロの関連会社として本サイトにも名前は載せてありますし... まあ、ホームページの URL は載せてませんけど、会社登記はちゃんとしてますし、登記上の社長は別な人ですし。白三プロとしては、これも分室と同じく新規事業の一環と考えてます」

「なるほど、私も名前は知ってましたけど具体的にはあまり詳しくありませんでした。なにせうちの会社も声優事業に始まってステージだの音響だのファンクラブ運営だの、何十も関連会社がありますからねえ」


「ま、フィジカル・ロック・ソリューションズは、その中ではタレントさん絡みのセキュリティ関連を扱うという名目の会社ですから、スタッフの方もあまり詳しくは知らないでしょうね。しかしタレントさん絡みのストーカー事件も頻発しているだけに、実は内部的には、その筋の方とも連携して事業化しようか? なんて話もあるんです」

「なるほど、最近の日本の内情に即した新規ビジネスですねえ」


「そうなんですよ。そういう事を準備してたら、社長が出てきて『悪い奴らはやっつけろ〜! Go, Go, Go!』みたいな話になっちゃってですね...」

「それで、分室で探偵業もやる状態になっちゃったと...」


「そうです。流れって怖いですよねぇ」

「う〜ん、社長のテーマソング作ってあげた方がいいですね!」


 二人は画面を見ながらしばらく談笑していたが、上森は少し真面目な顔に戻り言った。


「ところで、結構しつこくページを見ているようだな。ターゲットには今日の夕方頃には会社の資料が届くと思いますから、明日あたり色々と進展するかも知れませんね」

「研究科の生徒さん達にも頑張ってもらったし、そろそろ勝負って感じですかね」


「ええ、警察も手を出しにくい案件ですし、ここはひとつ我々の力でね!」

「悪い奴らはやっつけろ〜! Go, Go, Go!」


 二人は Mac の画面を見ながらニヤリと笑った。

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