第3話 マイナスの住民

ガタガタ揺れる車内の中で、コウジは舐める様に周りを見る。見たこともない文字が所々にある。


「かわいい文字だね。なんて読むんだ?」


「ろしあ語って言うみたい。

ガン爺しか読めないんだそれ。」


少女をよく見て見ると見慣れない緑色の服を着ている変に模様がかっていて、まるで本でみた森だ。


「その服、君の趣味?」


「違うよ。これはガン爺の趣味。でも動きやすいし、汚しても大丈夫だから仕事の時は愛用しているんだ。」


また疑問が増えた。コウジは少女に尋ねようとするまえに少女が口を開く。


「仕事って言うのはね、さっきみたいに巡回しているマシンを襲って使えそうなものを持って帰る事。」


「それもガン爺の趣味?」


コウジが聞くと少女はニヤッと笑い

「ううん。これは私の趣味。使えそうなものをガン爺にもってってあるものを直してもらってるんだ。」


「あるも…」


コウジが質問を言いかけた途端、車体が大きく揺れる。


ガッチャン ガッチャン


「なんだよ。舌を噛んだじゃないか」


コウジが不満げに少女を見ると少女がいない。コウジが驚いていると上から声がする。


「着いたよ。早く出てきて。」


少女に言われるがまま出ると、そこはあまり整理されていない車庫のようだ。

周りを見渡すとこれと同じような車体が何台もある。中には大砲をつけたモノまである。


少女に呼ばれ、進んだ先にマイナスと呼ばれる街があった。と言うより街だろうか?

街と言うよりはそこは基地だった。

所々にその(ろしあ語)らしき文字が見える。


そしてマイナスには、少女のような白い透き通るような白い髪と肌の人や、自分と同じ少し日焼けした人、反対に、黒く力強い人もいた。


自分の住んでいたエリアの記録によると、

Dエリア以降のエリアは高濃度の汚染物があり、近づけない筈だったが、その高濃度汚染区域にこうして街があり人がいる。

今まで信じていたものが違うとわかるとコウジは鳥肌が立った。同時に疑問に思った。

「なぜ?セントラルは嘘の情報を?」

いや、嘘であったかどうかはわからない。

もしかしたらこの場所だけイレギュラーであり、周りは高濃度かもしれないとも思った。


ぼーっとした所に少女が手を振る。


「はやく来ないと迷子になるよ。このあたりは複雑だから。」


たしかにこの辺りは非常に入り組んでおり、まるで迷路だった。エレベータに乗り、上がったと思ったら今度は階段を二、三回降りる。住宅街?のような場所に出た。住宅街と言うよりは巨大なマンションといった所か

丸い扉に丸い窓。ボルトの浮き出た壁に所狭しと部屋が連なる。


1402と書かれたドアの前で少女が止まる。


「ここだよ。気を付けてね。」


少女が忠告すると同時にドアを開ける。


「ガン爺〜ガン爺〜。」


わりと大きめな声で呼ぶが、返事はない。

失礼を承知で入って見ると、何に使うのかわからないガラクタと、もう何日も洗っていないであろう作業着のようなものが見える。

机に眼を向けると。さっきまで居たのだろうか、タバコの火が消えて居ない。灰皿の中で線香のように煙が立つ。

ハッキリ言って酷い匂いだ。

普段、コウジも綺麗とは言わないがある程度は清潔な暮らしをしてきた。

この部屋はたしかにDランク以下かもしれない…


しばらくすると少女が帰ってきた。


「ガン爺いないみたい。仕方ないから素材だけ置いて、私の家に行こう。」


一刻もはやく出たいコウジはすぐに了承し、少女の家にむかう。


道中、コウジは尋ねる。


「ここまで来て今更なんだけど、君の名前をまだ聞いてなかったね?なんて名前なんだ?」


少女はそう言えば言ってなかったねと言うと続けて答えた。


「私はマイナ。マイナって呼んでね。」


「俺はコウジ。0719 コウジだ。コウジでいいよ。」


互いに自己紹介を済ませると二人はマイナの部屋に向かった。


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