第2話 アンノウンランカー
コウジは夢を見ていた。昔、育成施設でみた絵本の夢だ。
「Bらんくになるとうえにいけるんだ。」
そこには天井がなく、何処までも透き通るような青い空間が広がっているという。
「Aらんくになるとそこでくらせるみたいだ」
隣にいるのはナカモトだ。
「ぼくはぜったいAらんかーになって
そらをみるんだ。」
そこでまた視界がぼやける。
次に意識がハッキリしたときコウジの視界に入ったのは少女の胸だった。
もうすこし気絶したままでいようかとも思ったが、ナカモトの事を思い出し惜しみつつも顔を上げる。
「助けてくれてありがとう。俺はコウジって言うんだ。君の名前…ランクナンバーは?」
少女は静かにこう答える
「らんくなんばー?そんなものないよ」
ランクがない?今の人類は誕生と同時にセントラルからランク付けとランクナンバーを与えられる。いわばランク付けは人間としての最低限の扱いを受けるための過程である。
「いったい君は…何処から来たんだ?」
コウジは恐怖と僅かな好奇心で少女に尋ねる
少女は子犬を愛でるような目で優しく呟く。
「私はあなたが暮らしてる最下層にすんでるんだ。あなた達が使うランクで言うならFランクかもね。私達はそこをマイナスって呼んでるけどね。」
「マイナス?私達…?君はいったい」
質問をすれば新たな疑問や単語が出てくる
疲労とストレスでコウジは軽いパニック状態だった。その少ない思考力でナカモトの事を尋ねると、少女はまた優しく微笑み、
「疲れてるでしょ?もうあなたがいた所には戻れないみたいだし、まずは私の家に来ない?」と提案してきた。
立っているのがやっとのコウジはそれを受け入れ、少女にただ付いていく。
少女は相変わらず、どこか読めない顔をしながらコウジを案内する。
「これに乗るんだ。」
少女が指差した先にあったのは見たこともない奇妙な乗り物だ。タイヤではなく、ベルトのようなものが動力源の様だ。前方には銃だろうか?まるでカタツムリの目の様に飛び出している。
「これは?…」
コウジが尋ねると少女はフフッと笑い、
「あなたはさっきから質問ばかり、まるで目に付くものなんでも気になる子供みたい。」
コウジが少しムッとするとまた少女は笑い、
「冗談だよ。これはケイソウコウシャ?って言うみたい。家の近くに捨ててあったのを
ガン爺に使える様にしてもらったの。」
少女はコウジにコッチコッチのジェスチャーをすると、エンジンをかける。
黒い煙を出しながら、二人を乗せ奇妙な乗り物は更に暗い地下へと入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます