第10話 勇ましき荒野の決闘

 先日のアビスンを倒した事で俺のレベルは、少しばかり上がったようだ。

 町の商店街にあるレベル測定器にこの世界の通貨10ウェンを入れた俺は、所定の場所に手をかざしスタートボタンを押した。


 クイズ番組のシンキングタイムの時のような音がして測定が開始された。ピコンと終了を告げる音がして俺の手のひらに数字が浮き上がった。


 おそらくレベル1だった俺は、どのくらい強くなったのだろうか。

 ゆっくりと手のひらを広げ数字を確認した。

 簡単な文字と数字程度ならケインズに教わっていたのでそれは容易に確認出来た。

 "レベル15"

 おそらくそれ程のレベルではないのだろうがモンスター1体を倒しただけにしては破格の経験値だと思う。

 "よし、ヒナに教えてやろう"

 今日は、妹と会う日なのだ。


 俺が待ち合わせ場所辺りに向かうとなんだか騒がしい。

 そこには、人だかりが出来ておりざわめいていた。

 人混みを見廻すと離れて様子を見ているヒナを発見した。


「おい、ヒナ。いったい何があったんだ」

「おにいちゃん、わたしもさっき来たんだけど、なんか決闘みたいよ。」決闘だって!なんか異世界に来たことを実感させられるぜ!


「ちょっと見て来るか」

 俺とヒナは人をかき分けながら中心に向かって行った。


 どうやら決闘をしている一人は、剣士のようだった。銀色の鎧を身にまとったその剣士はキリリとした顔立ちで長い金髪を後ろでまとめていた。女剣士だ。

 もう一方は、ええっと

 "SHINIGAMI"だった!


「あれ、あの人もしかして、この前の」ヒナも気付いたようだった。

「危ないから行こうか、ヒナ」

 関わらない方が無難だろう。

「ダメだよ、お兄ちゃんあの人きっとメルちゃんだよ」

「えっ、そうかな。よくある格好だと思うけど」俺はとぼけた。


 そのタイミングで死神は、仮面とローブを脱ぎ捨てた。


「やっぱりメルちゃんだよ」

 メルだった。知ってたけど

 妹は、俺に決闘を止めるようにいった。やれやれだ


「あのう、すいません。街中で決闘はやめてもらえますか。小さい子供もいますのでケガなんかしたら町のみんなが黙ってませんよ。」俺の言葉に周りからもそうだ、そうだという声が上がった。


「それとも、あなたの騎士道はそんなに野蛮なものなんですか」

 俺は、女剣士に言った。


 これでダメなら諦めて放っておこう。ヒナとランチ行きたいし


「くっ、わかった。お前の言うことはもっともだ、おいそこの死神今度会った時は、わかっているな」

 今まで黙っていたメルが口を開いた。「あたしが怖くて……」

 俺は、メルの口をふさいだ。


 剣士が去った後、俺達はランチを食べていた。

「ほんと、びっくりしたよ、わたしは」

 ヒナは、まだ興奮していた。

「で、メルっ喧嘩の原因はなんなんだ」

「あ、あいつが悪いんだ。あたしが買おうとしたドロミドロを横取りして……」

 そのことで言い争いになり決闘になったそうだ。


「ドロミドロってこの前取りに行ったアレか。結局取れなかったからな。そんなに欲しかったのか、メルっ」


 メルは、もじもじして小さな声で言った。

「この前取れなかったからタケルにおみやげとして持って行こうと思って」原因は、俺でした!


 ヒナは、ジト目で俺を見ていた。


「あ、ありがとうな、気持ちだけで嬉しいよ、メル」

 メルは、少し微笑んだ。


「俺からも報告があるんだ」

 俺は、手のひらを開いて二人の前に差し出した。


「「ああっ、すごい!」」

 俺の手のひらにはレベル15が浮かんでいた。今度は、メルも本当に嬉しそうに笑った。


 メルの推測では、あの沼にいたアビスンは、ドロミドロを食べて育ち経験値が通常のものより多かったんじゃないかと言うことだった。


「ありがとうな、二人のおかげだよ」俺は感謝の気持ちを言葉にした。


 メルは、俺に話があるので一緒にケインズの家に行く事になった。


 帰る前にメルは、ヒナに抱きつききゃあ、きゃあ言わせていた。

 どうやらいつものメルに戻ったようだな。


「ただいまー」と言って俺は家のドアを開けた。まあ、店のドアでもあるけど


「お、お前たちはさっきの!」

 店には、女剣士がいたのだった……

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