第6話 魔法使いの姪

 俺は、ヒナと別れた後、町の外れにあるケインズの奥さんの姪の家に向かった。

 もちろん魔法を教わる為だ。ヒナに聞いたところによるとこの世界には魔力計といった魔力を測るアイテムがあるらしい。


 ヒナは、前に魔力検査を受けておりなぜか魔力値が高かったため魔王軍の英才教育を受ける事になったそうなのだ。


 どうやら山を削り取る程の魔力が誰にでもある訳では無いらしい。


 ケインズは、詠唱無しで魔法を打っていたが「ファイヤーインパクト」という技名と紐付けする事で詠唱を省略することもできるらしいのだ。


 俺も、ぜひ自分の魔法にかっこいい名前をつけたいものだ。

 あれこれ名前を考えながら歩いているうちに目的の家に到着したようだ。お菓子の家みたいな外見と聞いているので多分合っているだろう。


「すいません。メルさんはいらっしゃいますか?」俺は、ドアの前で叫んだ。

「はあ〜い、どなたですか〜っ」

 一回転しそうな声が帰って来た。

「ケインズさんの紹介でやって来ましたタケルです」


 家の中からドタドタと音が聞こえ家の扉がバンッと勢い良く開いた。

「ギャーっ」そこには死神がいた。


「やったぁ、大成功っ!」

 そう言ってドクロの仮面を取るとそこには青い眼のかわいい女の子がいた。髪の色は、珍しい銀色だった。

「ねえねえ、びっくりした、びっくりした?」

 まためんどくさいのが現れた。


「ええ、びっくりしました。あんまりかわいいんで」俺は、仕返しのつもりで言ってやった。


「えっ!そそそ、そんな事ないよ。あ、あたしなんか……」

 と赤くなって思った以上に動揺している。


「あのメルさんでよかったですか」

「メルさんがいいなんてそんなっ、まだ早いっていうか……」

 言ってないし、わけがわからん。

 だいたい始めのサプライズは何なんだ。


「あのう、魔法の事なんですが……」俺は切り出した。

「そうだった。ケインズさんから聞いてるよ」

 ケインズからちゃんと伝わっているようだ。


「恋の魔法でしょ!」

 おいっ! ケインズ!


「いえ、あの普通のやつをお願いします」


 俺は、家の中に入れてもらいテーブルのイスに座った。

「ではあらためて、あたしがケインズさんの姪のメルです。メルと呼んでね。タケル」メルは、嬉しそうに微笑んだ。


「初めましてメル、今日はよろしく」

「じゃあさっそく」

 と言ってメルは、死神の黒いローブを脱いで…


「ギャーっ」下着だった。


「これ水着だよ」メルは、落ち着き払って言った。

 俺は、さっきの死神より驚いた。

 そしてひとまずメルに着替えて来てもらった。


 メルは、黒いワンピースを着て戻ってきた。魔女っ子のメルに良く似合っている。

 俺が良く似合っているとほめると赤くなってもじもじし出したので今後は控えるようにした。


「あたし昨日からタケルが来るのを楽しみにしていたんだよ」

 悪い気は、しない。


「だってもう誰もあたしの死神に驚いてくれないんだもん」

 そっちかよ‼︎


 魔法の話に戻り、メルはまず俺の魔力を測りたいと言い出した。


「魔力計を持って来るね」

 しかし魔力計って体温計みたいなものだろうか?


 メルが持って来た魔力計は、水晶だった。

「これ水晶玉だよね」

「うん、これに魔力計の能力をプラスしたんだよ。」

 なんかアプリみたいだな。


 メルは、テーブルの上に水晶玉を置くと手を載せろと言った。

 俺は素直に水晶玉に手を乗せた。


 電子ルーレットのような音がしてだんだん遅くなり、そして止まった。


「えっ‼︎」メルがマジ顔で驚いている。

「な、何だどうしたメル」

 俺は水晶玉を覗き込んだ。


 魔力計に映し出された数字は

 "ゼロ"だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る