第5話 このたび魔法を覚えました

「ケインズは、どんな魔法が使えるの!」俺は、ワクワクしながら聞いた。

「そうだなあ、"恋の魔法"かな。」

 俺は、今までの人生の中で一番シラッとした顔でケインズを見た。


「まてまて、そのおかげでわたしは、家内と出会い……」

 と話しながら奥さんを思い出したのか最期は涙声だった。

 だったら話するなよ。


「実は、家内はウィザードだったんだ。」

 恋の魔法掛けられたのあんただよ!


「家内には、いろいろ魔法を教えてもらったもんだよ……」また涙声になった。結構めんどくさい人だ。


 話が一向に進まないので俺は、ケインズを慰めて火の魔法とか水の魔法とか具体的に聞く事にした。


「わたしは、本職の魔法使いではないから大した魔法は、使えないがもし家内がいたら……」

 おいっ!そこに戻しちゃ駄目だろ!


 ケインズは、危ないから少し下がっていろと言った。そして手のひらに魔力をためていた。

 俺は、火がボワっと出るイメージをしていたのだが。


「ファイヤーインパクト‼︎」

 とケインズが叫んだ瞬間


 "我が家の壁が消し飛んだ"


 呆気に取られている俺にケインズは言った。


「壁を直すの手伝ってもらえるかな。」おいっ!


 結局、壁を直すのに夜までかかった…


 俺は、布団に入りながら興奮を抑えきれなかった。あれで大したこと無いなんていったい……


 明日は、奥さんの姪の魔法使いを紹介してもらえるようなので楽しみだ。俺は、早く寝れるよう羊を数えた。


 翌朝、俺はまた商店街に出かけた。妹から集合の合図があったのだ。と言っても連絡手段があるわけではない。

 合図の方法としてヒナが、商店街に来るタイミングで魔王城のてっぺんに赤い旗をあげてもらうことにしたのだ。


 この世界にも望遠鏡があり魔王城が見える立地の為、当面は使える方法だろう。


 妹は、前に偶然あった場所で近くの木箱に座って待っていた。


「ごめん、待たせて悪い。ヒナ」

「待ってないよ。今来たから」

 と言ってヒナはニカッと笑った。


 立ち上がった妹のスカートには長く座っていた様なシワが付いていたのに……


「昼ご飯でも食べに行こうか。」

 と俺が言うとヒナは「お兄ちゃん、ごちです。」と先に歩き出した。目当ての店があるらしい。


 俺は、またおごりかよと思いながらも嫌な気はしなかった。


 昼を食べながら魔法の話をした。

 俺が昨日の壁を壊した話をするとヒナは、ツボにはまったのかテーブルをバシバシ叩いて笑っていた。

「笑うけど直すの大変だったんだぞ。」

「でもすごいよ。天然だよ、その人、なんかもう保護してあげないと。」

 希少生物みたいな言い方はやめろ。天然は間違ってないが。


「魔法は、あたしも今習ってるよ。」なに⁉︎

 妹は、魔王軍で英才教育を受けているらしい。

「今は、山の先っぽを吹き飛ばす程度だけど。」

 えっ、すごいんですけどそれ。

 お前もう魔王軍倒せんじゃね。


「なんか俺に教えられる魔法ある。」ただし恋の魔法以外で!


「う〜ん、そうね。光の魔法はどうかな?育てればカミナリの魔法になるよ。」おっ、それいいね。


 俺は、妹から詠唱呪文を聞き、となえてみた。

「最初からは、無理だよ。」とヒナが言った直後、俺の指先から閃光が走り金属製のスプーンを弾き飛ばした。


「「えっ!?」」俺とヒナは驚いた。


「すごいよ!お兄ちゃん!もうカミナリになってるよ!」


 ヒナの教え方が良かったのかどうか分からないがどうやら俺は、魔法が使えるようになったみたいだ……

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