好きな人、幸せになれる人
「結婚おめでとー!!幸せになってよねー!」
同い年のいとこが泣いてお祝いしてくれた。
私は今日、結婚する。
小さい頃からの夢だった、ふわふわの真っ白なウエディングドレスを着て、好きな人と結婚式を上げることが。
「さきに結婚しちゃうなんて寂しいけど、旦那さんに幸せにしてもらうんだよ!」
「うん、ありがとう」
服装の準備中に母と一緒に入ってきたいとこは私をみたとたん泣き出してお祝いしだした。
「結婚するのね」
「そうよ、ママ」
ほんの少し涙ぐみながら母が微笑んだ。
「大丈夫よ、あの人なら。きっとあなたを幸せにしてくれるわ」
「ええ、そうね」
母に微笑み返す。
私が選んだのは好きな人。
ではなく、幸せになれる人。
結婚って幸せになる人とするものだと思う。好きな人を選んではだめ。
それは、母からの教えだった。
安定した収入
真面目な性格
高学歴
そして自分を愛してくれて
そして自分が愛せて
そんな人を選んだ。
「そろそろお時間です」
担当の人が呼びに来てくれた。
「いくね」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい!」
母といとこが笑顔で送り出してくれた。
幸せになれる彼を私は愛してる。だけど
好きじゃない。
私の好きな人は、あの子だから。
好きで好きでたまらなかったあの人はいなくなってしまった。私をおいていってしまった。
好きだった、大好きだった。だけど、だけど、
「パパ」
扉の前で立っていた父を呼ぶ。
「…大きくなったな」
「ふふふ」
「綺麗になった」
父が涙ぐんだ、父の涙なんて始めて見た。
「パパ」
「なんだい」
「育ててくれてありがとね」
「ああ」
「そろそろお式のお時間ですので、準備お願いします」
父の腕を組んだ。
あの人は絶対にこない。この場所に。
「いってらっしゃいませ」
扉が開く。一斉にこちらをみんなが向く、一歩踏み出す。
目の前にいるのは、幸せになれる人。
温かい目でこちらをみて微笑んでいる、その笑顔がなによりも温かくて、
踏み出すたびに近づいていく。
本当はまだ忘れられてない、あの子のことを。
好きなあの人を。
また一歩。
ねえお願い、迎えにきてよ
また一歩。
「ちょっと待って!」
後ろを振り返る
立っていたのは、
大好きなあの人
「行こっ!」
手を握ってここから連れ出される
みんなが口を開けて、
時間が止まってしまったようで、この世界には二人しか存在しないような
また一歩。
もう一度、私の手を引いて
また一歩。
「ありがとうございます、お義父さん」
「娘を頼むな」
「はい、ぜひ」
腕を組み替える。
「その健やかなるときも、病めるときも喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを、」
横には幸せになれる人がいる
「誓いますか?」
そんなの夢物語だなんて、わかってる
だけどもう一度君の笑顔が見たかったな
「誓います」
彼が言った。
神父が私を見る
「誓いますか?」
――今すぐ私を連れ去って。
「誓います。」
「それでは誓いのキスを」
―叶うはずもない、そんな淡い恋。
ベールをはずされる
そう。これでいい。
「君を幸せにする、約束するよ」
もう二度と会えない人に恋をしたままではいけない。忘れると、約束したんだから。
「ええ」
きっと、幸せに私はなれる。
―end―
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