月と星と愛と恋。

「愛してる」

この人はだれだったかな

「こっちみて、いくよ?」

頬に手を添えられる

「ああ、気持ちいい」

キスをしてくる

「ねえ?愛してる?」

どうやって答えようか

考え事をしていたらふいに聞かれてちょっと戸惑った。まあ、そこまでだけど

「愛してるよ」

笑顔でそう答えた、すると目の前のこの男は切羽詰まった顔をして必死になっていた。

どうしてこう、聞きたがるのだろう

「ねえ?もういい?いいでしょ?だすよ?」

あ、ちょっとまて

「やあっ」

とりあえず喘いでおく、もうこの男にはなにも感じなくなった。

「んっはあっ…はあ、はあ…」

体の快感も

「あっ…はあ、い、いくよ?」

温もりも

「あっ、だめえっ」

心も


「じゃあ、また今度」

「ええ、また今度」

1つキスを落とされ別れる。

夜、ひとりで歩いて帰る。

街灯もないから真っ暗だけど、星は明るい。なにより月が綺麗だった。

「今日は満月か」

いろいろな人に抱かれるようになって、だんだんなにも感じなくなってきた。

体の快感も、心も、なにもかも感じなくなった。

唯一残ってるのは、あの人だけ。

「約束の日は、明日か」

満月の次の日だけ会える、恋しい人。

のんびりとそんなことを考えながら帰っていたら家についてしまった。

ドアをあけて家に入る。

「どこいってたの」

相変わらずの母親からの疑問。うるさい。

「どこでもいいでしょ」

頭に響くこの声が大嫌い。

すぐさま自分の部屋に入る。

あの人にとやかく言われる筋合いなんてない。この家に男いれてるくせに。

窓から見える月をもう一度見る。

いや、母親なんてどうでもいい

「そんなことより、明日着ていく服の方が大事だわ」


いつもの時計塔の下で待つ。ふとスマホを見れば時間は夜の7時だった。

「待った?」

柔らかい低い声。

振り向けばそこにいるのは恋しい人。

「ううん、ついさっき来たとこ」

自分より背が高いので見上げる形になる。

「会いたかった」

胸元に飛びつく。暖かい胸。

「じゃあ、行こっか?」

男らしい手を繋がれて、後ろ姿もカッコイい。

しばらく歩いてついたのはホテル。いつものように入って予約をとっていたので名前を彼が言ってそれで終わり。渡された鍵に書いてある部屋へと向かう。部屋について鍵をあけて中に入る。

「ねえ」

荷物と上着をおいたら後ろから抱きつかれる

「寒いからあっためて?」

いつものお決まりの嘘のセリフ

後ろを向いて触れるだけのキス。

ずっと待ち続けたもの。あたたかい体、これだけで体は快感で。

「じゃあ」

いつものお決まりの条件をつける

「愛して?」

服を脱いでベットに座った。

「愛してあげる」

キスをして、ベッドに倒れ込む。


「ありがとう」

彼からいつもと同じ言葉がくる。だから私も同じ言葉で返す。

?」

「うん、。」

私の恋しい人は彼。だけど、彼の恋しい人は

私によく似たあの人。

一見ただの彼氏彼女なのに、私達は純粋な彼氏彼女になれない。

彼の心は私にないから。

彼が愛おしそうに私を抱くのは、私があの人に似ているから。

彼の心がほしい。

なんどそう思ったことか。

「月が綺麗だね」

「うん…」

後ろから抱きしめられた状態でカーテンから少し見える月を眺める。

「月が綺麗だねって別の意味なのわかる?」

「え?」

「愛してるって意味なんだって」

「そうなんだ」

ほんとは知ってたけど。だけど、こんな会話も愛おしい。

「ねえ」

「なに?」

「あのね」


あなたは私の想いに気づいていないのよね


「ううん、なんでもないの」

「なんだよそれ」

笑われてしまった。

「ちょっと眠くなってきたわ」

「寝る?」

「じゃあお前こっち向いてよ」

言われたとおりにする。すると抱きしめられる。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

数分もすれば眠ってしまった。

恋しい人の寝顔。その顔は普段の大人っぽさがぬけてあどけない顔をしていた。

それがあまりにも愛おしくて。

とにかくこの人を自分のものにしたくて。

ねえ

あなたの心がほしい。


「星が綺麗ね」


              ―end―

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