初恋と青空と失恋と

「あーあ振られたかぁー」

帰り道、雲一つない青空を見上げながらそう呟く。

人生初の恋で、そして今日が人生初の失恋。

案外あっけなかった。

「まあ振られるってわかってたんだけどさぁ」

普通漫画とかなら振られたらだれかが告りに来てくれてそっから主人公が泣いて付き合うことになってめでたしめでたしってパターンだよね。

「まあだけど」

そんなの漫画のお話だ

「あーあ終わっちゃったなぁ」

あの人が好きなときは世界に色があった

あの人に恋をする前は、色のない世界で同じような日常をずっと続けてた。

だけど君に恋をした日から

世界が輝いて見えた。

毎日が新鮮で、色が鮮やかで、明るくて、きらきらで、幸せで。

君との日々は本当に幸せだった。

「どうしよう」

終わってしまった、この瞬間

世界はまた色が消えた。

「あーもう」

なんにも感じなかったのに

「やだ」

あとあと溢れてくるこの涙は

「やだやだ」

止まるということを押し切ってしまった

「なんで好きになっちゃったのよ」

一目惚れ

「あーもう、なんであんなのに惚れたんだったかなぁー」

笑顔

「あんなのよりもっといいのいるはず」

いるはずない

「さっさと忘れればいっか」

忘れられない

「あんなの大っ嫌い」

大好き

「どうしよう」

どうしよう

辛くて辛くてたまらない

胸がいっぱいで苦しくて、目からは涙ばかりで、歩くこともできなくなって、喉からは嗚咽がこみ上げるばかりで、口を両手で抑えて立ち止まることしかできなくて

よく失恋をしたら、次へ早く進めって言うよね。さっさと忘れて新しい恋を探せって。

だけど、そんなの私には無理。

そんなに強くないもの

もし進まないとだめなら

もう少し待ってもらっていいですか?

もう少しだけあの人を想ってもいいでしょ?

もう少しだけここで立ち止まって涙を流してていいでしょ?

だってさ

両思いなんて、ただの奇跡じゃない。

そんなのあり得ないんだもの。

涙をもうこれ以上流さないように空を見上げる。

そこには相変わらず雲一つない青空が、嘲笑うように広がっていた。

あーもう、ほんとに


「好き」

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