第10話元勇者はナナに昼食を誘われる。魔王学校 1年目(4月15日。朝)

「昨日は、本当にありがとうございました」

魔王学校の朝の教室。

薫は教室の自分の席に座り、自分の顔を他の学生に見られないよう顔を伏せて、仮眠をとっているふりをしていたのだった。

そんな、誰も話しかけないでねといったアピールをしている薫に、 昨日いじめられていたナナが、薫の肩をトントンとたたき「おはよう」と、話しかけてきたのだった。


昨日、ナナを助けた時は同じ教室だとわからなかったが、どうやら同じクラスのようだ(薫が必要以上にビクビクしてて、同じクラスの学生の顔を見れず、顔を覚えなかったというのも理由の一つだが……)。

ナナをあらためて見ると、とても可愛い、ユイとは違う魅力がある。

髪は黒髮で長く、艶やかだ。

肌の色は白く、やや大人っぽく見える。

魔王学校での出会いでなければ、仲良くなりたいところだが、悲しいことに、ここは魔王学校。あまり関わらないようにした方がいい……。

「どういたしまして、気分をきりかえて今日から頑張ろう」

薫は、昨日のことはもういいから、かかわらないでくれと言いたかったが、同じクラスの同級生に、どういう言葉で伝えればいいかわからず、一般的な言葉を言ってしまったのだった。

薫は、心の中で、もう俺に関わらないでくれ、とつぶやく。

だが、薫の思い通りにいかないらしい。

「もしよかったら、一緒にお昼を食べたいんだけど、どうかな?」

と、ナナは恥ずかしそうに言った。

「お昼かぁ〜」

薫は、即答で断るのも悪いと思い、ちょっと考えるふりをした。

そうしている内に、ナナから、

「弁当を作ってきたんだ。

だから、…………。

ねっ(お願い)」

薫は、可愛い女の子から、お昼のお誘いを可愛く誘われて断るだけの、心の強さはなかった。

そして、薫は、嬉しそうに、

「喜んで‼︎」

と、言ってしまったのだった。

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