第9話元勇者は、校庭でいじめられている同級生の少女を助ける。魔王学校 1年目(4月14日)
魔王学校は、人間界の学校とほとんど変わらない。
そして、魔王学校にも部活や、生徒会などの組織はある。
新入生が入学して何日かたち部活の勧誘活動が激しくなってきた。
薫は部活に入らないつもりだ。できるだけ学校の生徒と関わるのを避けたい。
それに他にも理由があった。
入学してすぐの簡単な学校の勉強にすらついていけず勉強をする時間が必要だったのだ。
それなので、薫は、放課後の教室で、ユイに勉強を教えてもらっているのであった。
「ユイはよくわかるよな。
使えるの?この魔法?」
薫は、ユイより魔法が使えるのに、ユイから魔法を教わるなんて……、何かがおかしいと思っていた。
薫は、聞いた後、ちょっと意地悪な質問だったかな?と思った。
「えへへぇ〜。
使えるわけないじゃん。
だって魔力も足りないし……」
薫は、意外と魔王学校の勉強が理論的で不満だった。
確かに、魔界を発展させるために、経済や地理、歴史の勉強をするのは仕方が無いと思う。
だが、魔法は違う。
魔法はいくら呪文や魔法陣を覚えたって、魔力がなく、使えなかったら意味がない。
それに、魔法は想像だと薫は考えていると。
魔力があれば、呪文を知らなくたって、自分が思った結果を作り出すことができる。
と、考えながら学校を卒業できなければいけない薫は、教室で勉強をしていた。
ふと、薫は集中力が切れ、校庭を見ていると、人だかりができていた。
制服の色からどうやら1年生だろう。
よく見ると、一人の少女が他の生徒に囲まれているように見える。
少女は、遠くてよくわからないが、服がボロボロで、傷つけられているように見える。あの少女は、いじめられてるのだろうか?
関わらないようにしよう。そんな風に見ていると、少女に向けて、魔法で作った大きな氷が投げつけられようとしていた。
ヤバイ。あれが、ぶつけられると大怪我になる。
そう思うと、勇者だった時のくせだろうか、自然と3階の窓から飛び出していた。
薫は、いじめられている少女にせまった氷を剣によって砕いた。
魔法を使えば簡単だったが、とっさに魔界由来の魔法を発動できる自信がなく、剣で対応したのだった。
いじめられて少女は、無事に傷はおわなかった。
「急に出てきて、いったい何者?」
大きな氷作っていたであろう同学年の少女から怒鳴られた。
薫は、しまったと思った。魔王学校で目立つことをしたくなかったのに……。
返答に困って黙ってしまう(薫は、パニックとなると、黙るという良くない癖が出てしまう)。
「今のは、ちょっとやりすぎだな」
後方から声がしたので、振り返ると2年生の少女がいた。
1年生、しかも入学してばかりの1年生にとって上級生に目をつけられたくない時期だ。
だから、どんな理由があるにせよあまり良くないと取られる行為で、2年生に目をつけられて、今後の学校生活をつまらないものにしたくないと、いじめをしていた少女達は思ったのだろう、つまらなそうに無言で散っていったのであった。
「助かりました」
と、薫は社交辞令的に、2年生に向かってお礼を言った。
2年生が来てくれなければ、もしかしたら薫も一緒にいじめられていただろう。
「見事な剣さばきだったね。
私は、生徒会副会長をしているフミだ。
今後も、何かあったらよろしく頼む」
「私は、薫です。
こちらこそよろしくお願いします」
そこで、さっきいじめられていた少女が挨拶をしてきた。
「先ほどはありがとうございました。
私は、ナナと申します」
「こちらこそ」
と、薫は答えて、これ以上、やっかいごとに巻き込まれないよう「それでは」と言い、ユイのところに戻ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます