第6話元勇者は、魔王学校に入学する。
「そろそろですね」
ユイは、長いピンク色の髪を風になびかせながら言った。
そろそろとは、魔王学校への入学のことだ。
魔界由来の魔法の修行は、思ったようにいかなかった。
天界由来の魔法が使えれば、どんな魔物だって(一対一の対決なら)、負けない自信があるのに……。
魔王学校では、ほそぼそと生きなければならないのだろうか?(不安だ)。
「そういえば、ユイは学校でどんなサポートをしてくれるんだ?」
「えっ。
えっ。
……、……。
えへっ」
薫は、ここ1ヶ月、ユイと一緒に暮らしてきたから、こういった行為に慣れてきている。
だが、なんかサポートしてくれないと、正直……心細い。
ユイは続けて話す。
「えぇ〜とですね。
薫様と私は幼馴染という設定で、一緒に入学します。だから、呼び方に慣れるために、今後は呼び捨てにしますね。
あと、私の戦闘力はあてにしないでください。
最初に出会った時を思い出して欲しいのですが…………」
ユイは、恥ずかしそうに言った。
薫は、そうだった、そんなこともあったなと思い出した。
「呼び方はいいとして、そんなに弱くてたくさんの魔物の中に入ることになって、万が一襲われることがあったら大丈夫か?」
「うっ。
…………。
うっ、うっ。
…………。
何かあったら、薫に守ってもらう予定です。
それと、まことに言いづらいことがあるのですが……」
「ん、どうした?」
さらっとユイは他力本願なことを言っておいて、さらに言いづらいことがあるのだろうか?と、薫は思った。
「聖剣を私に預けて欲しいのです」
「えっ」
薫は、答えに困った。聖剣を手に入れるのに、どんなに苦労したことか、なんど死にかけたことか……。
「聖剣の波動はとても強いです。
薫が持っていると、するどい感覚のあるものであれば気づいてしまう可能性があります。
私が持っていれば、その波動を抑えられるので大丈夫です」
と、真剣な顔つきで言う。
確かに、薫は魔物に聖剣を投げつけたあと、聖剣を回収するのに拾いに行ったりはせず、力を使って呼びよせるだけだ。だから、問題ないと思う。
思うが、 だが、貸すとなると……。
しかも、聖剣がもともとあった天界の天使に貸すとなると、なんか細工されないか不安が残る。
そんなことを、薫は考えたが、ユイがあまりにも真剣な顔をしていたので、ユイに預けることにしたのだった。
そして順調に時は流れ、4月になり、魔王学校の門を2人で一緒にくぐったのだった。
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