第5話元勇者は、魔王になるために天界で修行する。
「無事に着いたようです」
ユイは、ニコッとしながら薫に話しかける。
天界には、人間界、魔界にはない、聖なる空気がある。
薫は、勇者の時に何度か天界に着たことあり、天界の空気を知っていた。
が、着いたとこはなんか違う。
天界の空気もあるが、魔界の空気も混じっている。
例えるなら(乱暴かもしれないが)、匂いの良い香水が満たされている部屋の中に、腐った生もの臭いが入って、いい匂いと臭いごちゃ混ぜになった感じだ。
薫がいままで訪れたことのある天界と雰囲気が違う。
「ここは、本当に天界なのか?」
「天界ですよ。
ただ、魔界に近い場所になります」
「ん、んっ?
なるほど、だから、天界の空気の中に、魔界の空気が混じっているのか。
でもいったいなぜここに?」
「私が、魔界の空気に馴染み、また魔界に行っても襲われないようにするためです」
さっき、確かに天界から3日以内に魔界から来た天使は襲われやすいと言ってたから、体をならすために魔界に近い天界を選んだのだろう。
天界にきて、ひと段落して、
「そういえば、どうやれば魔王になるんだ?」
と、薫は、ずっと気になっていたことを聞いた。
「魔王学校に入って卒業をし、各地を治める魔物に王を認めさせれば、魔王になれます」
「魔王学校を卒業って?」
「高校程度の内容を習得していただく、教育機関でございます」
「いや、いや、いや、力ずくで、魔物を制圧すればいいんだと思っていたのだが……」
「最終的にはそうなのですが、魔王の仕事は魔界の繁栄。
そのために、ある程度の学力が必要になるのです。ある魔王の時代から魔王学校を卒業したものでなければ、魔王になれないと定められたのです」
「けど、元勇者とバレたら、襲われたりするんじゃ……」
魔王をたおした元勇者とはいえ、不意打ちで魔物の大軍に襲われ、何日も戦うことになったら、持久力で負けやられてしまうことを懸念して当然の質問だった。
「大丈夫です。
薫様がたおした魔王にも反対派閥がいるため、そちらの勢力からは、むしろ歓迎されています。
それに、ここで元勇者とわからないようにするために、修行をしていただきます」
「んっ、ん?
てことは、天界由来の魔法は使わず、魔界由来の魔法のみしか使えないということか?」
「そうなりますね。
天界由来の魔法を少しなら使っても問題ないと思いますが、やはりできるだけ使わない方がよろしいかと思います。
なので、魔界由来の魔法を、ここで修行していただきます」
薫は、勇者時代に天界由来の魔法をよく使った。
なぜなら、魔物に効果絶大だったからだ。
だから、勇者は天界由来の魔法を使うと魔界に知れ渡ってる。
それに、薫が持っている聖剣は、天界由来の魔法と相性がいい。
薫が全力を出して使え剣は、聖剣のみだったのだ。
薫は、多少なら魔界由来の魔法を使える。
ただ、その力は、レベルの低い魔物と戦うのにすら、苦労する程度のものなのだ。相当、気合い入れて修行しなければいけない。
「ところで、いつから入学することになるんだ?」
「4月の頭に他の新入生と入学することになるので、あと1ヶ月ですね?」
薫は、なんでそんな日程にしたんだと思いながら、もくもくと修行を始めたのだった。
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