第2話私は、薫様の使い魔です。
「あっ」
「うっ」
「きゃー」
聞こえてくるうめき声は、薫がユイとSMプレイを楽しんでるからではない。
薫が次々とやってくる魔物達をたおした時の魔物のうめき声だった。
「なぜ急に魔物がこんなにやってくるのだろうか?」
薫は、魔物をたおしながらつぶやく。
それに対して、ユイはおそるおそる薫に伝えようと声をあげているようだったが、魔物のうめき声のが大きくて聞こえない。
何匹たおしても魔物が次から次へとわいてきて切りが無い。
最初の頃は、楽しく斬り倒してきた薫も、100匹程度たおしたところで飽きてきた。
そこでいったん魔法であたり一面を焼き尽くして、魔法でドーム型の防御壁を作ったのだった。
「物凄い力ですねっ」
ユイが尊敬の眼差しを向けてくる。
「いえ、いえ。こんなの力を軽く使っただけですよ」
強がりとも取れる薫のセリフだが、余裕の表情を浮かべていた。
本当に軽く力を使っただけなのだろう。
「本当にお強いです。
惚れてしまいました。
先ほどの言葉は、プロポーズと受け取ってよろしいのですよねっ?」
ユイは、頬を赤らめながら、うつむきかげんで言う。
「……」
どう答えていいのかわからない薫は黙ってしまう。
無言でユイは顔を上げて、目を潤ませながら、薫の顔を覗き込んで来る。
そうですよねっと訴えかけてくる視線だった。
ユイは正直言って可愛い。
今すぐ、抱きしめてしまいたいくらいだ。
だが、結婚をしたいわけではない。
「うっ」
薫は思わずうめき声をあげてしまった。やっぱり、勘違いされてしまってたか。
この場の雰囲気で、失礼なうめき声だが、どう誤解を解けばいいか、薫は考えれば考えるほど、考えがまとまらず、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
この場の雰囲気では、エッチなことをしたいから、「お礼に、ユイが欲しい」と言っただなんて言える雰囲気ではない。
どうしよう困ったと薫は思った。
ユイは、薫の困った表情から察したらしく、
「ひょっとして、結婚という意味でおっしゃられたのではなく、エッチな意味でおっしゃったのですか?
助けていただいたお礼ですので、仕方がありません。
あなた様に助けていただかなければ、死んでいた命。望まれたとおりいたします。
あなた様がおっしゃれば、この場ですぐに全裸になりますし、足だって舐めます。
それだけで足りなければ、あんなことやこんなことも、あなたさまの思いのままです」
「なっ」
薫が、望んでいたエロ方面の展開だがなんか違う。
展開的に、なんだか悪役とか悪代官のこうどうではないだろうか。
薫は当初、褒美としてエロ方面を要求する予定だったが、魔物を次々とたおしていくうちに、悪役(魔物)をたおしたヒーローという設定(気分)にしたいと思ってきてしまっていたのだった。
勇者はやめたが、かっこつけたいとという気持ちは薫に残っている。
その上、薫はそもそも、女の子にエッチなこと要求できるような勇気の持ち主ではない。
基本的にヘタレなのだ。
だから、薫は、方針を転換して、
「そんなわけないじゃないか。
お礼は、いらないと言おうと思ったんだけど、魔物がいきなりきたから間違ってそう言ってしまったんだよ。
勘違いさせてすまない」
と、言った。
薫は、強引?意味が通じない?流れが悪かったと言ってから思ったが、言ってしまった以上しかたがない。
それに対して、案の定、ユイは、私は聞き間違えてないと思うが……という困惑した顔をしていた。
しかし、助けられた側が、意味不明な話の流れを突っ込むのはどうかと思ったのだろうか、
「助けていただきましてありがとうございます」
と、お辞儀をしながら笑顔で言ってくれたのだった。
薫は、途中でお礼の内容を変更したものの、人(天使)助けをしたという満足感があった。
だが、どうだろうあいかわらず魔物がドーム型の魔法防御壁によってかかってくる。
見渡すかぎり、薫の防御壁を破れそうなレベルの魔物はいないが、中に入りたいという必死さがうかがえる。
魔物の中には、無理やり入ろうとして消滅したのもいる。
いったいなぜだ?
そういえば、魔物をたおしている時に、ユイがなにか言おうとしてた気がする。
それに、こんなに魔物がここに寄ってきたのはユイがきてからだ。
「どうしてこんなに魔物がよってくるか理由を知ってる?」
薫はユイへの質問した。
それに対して、ユイは顔をふせて、申し訳なさそうに話す。
「それはきっと、私を食べようとしているからです。
魔界では、天界から来て3日以内の天使を食べると大幅にレベルアップするという言い伝えがあるそうです。
レベルの高い魔物は、食べても意味がないということを知っているのでこないのですが、レベルの低い魔物は熱心に信じてている者がいるらしく集まってくるのです」
薫は思った。犯人は、お前かっ‼︎と。
しかも、3日以内に食べればって、3秒ルールみたいなものかっ‼︎と突っ込みたい。
が、そんなことより、魔法の防御壁を早く解除したい。
なんだかんだで防御壁を維持するのは疲れるのだ。
そろそろ休憩したいと思っていてのに、ユイのせいでは、防御壁をやめることができない。
(まあいい。疫病神である天使であるユイに、早く帰ってもらえばいいこと)
そう考えながら、薫は、真剣そうな勇者顏つきで、
「どうして、天使様はこんなところにいらっしゃるのですか?」
と、聞いた(ちょっと嫌味っぽかったかな。いや、早く帰っていただくには、ちょっと棘があった方がいい。そのための勇者顏だ)。
「あっ、そうでした。
私は本当に薫様のものになりにきたのですよ。
これからもどうぞよろしくお願いします」
ペコリっという音が聞こえてきそうなお辞儀をしながら、ユイは言った。
薫は、ぼーとしてしまった。
いったい何を言っているんだかわけがわからない。
「何をいっているんだ?」
薫は、キャラ作りも忘れ、ボソッと言った。
「今日から私は、薫様の使い魔ですっ♡」
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