第3話元勇者は、魔王を目指す。
薫の頭の中は、パニック状態にあった。
目の前にいる髪がピンク色の可愛い天使は、「今日から私は、薫様の使い魔ですっ♡」などと急に言い出したからだ。
薫は考える。いつのまにに天使を使い魔として、契約してしまったのだろうか?と。
天使を使い魔にするなんてなかなかできることではない。
まあ、勇者だった俺ならできるだろうが、いつ使い魔にしたんだ?
よく考えろっ。考えろ、考えろぉ〜。
人間より高位の天使を使い魔しておいて、「いつ、どこでしましたっけ?」っと、聞けるわけがない。失礼すぎる。
過去に何かやってるはずだ。
直近で、きっかけとなることは、してない(ような気がする)。
勇者時代か?
そういえば、あのダンジョンに入った時、それっぽいことしたような。
いやいや、あの村に行った時か?
どれも決定的な場面を思い出せない。
しかし、きっかけとなりそうな場面は色々ある。
しかも、薫はまだ名乗ってもいないのに、ユイは薫の名前をしっている。
名前をしっているということは、どこかで出会っていると考えるのが普通だ。
なんとかして思い出すのだっ。
薫は、ユイと出会って困る場面は何度かあった(見方によっては、薫が一人で困る場面を作ってばかりだったが……)。
しかし、今が山場だと思った。
どうすればいいのだろう?
薫は、困るとパニクって黙ってしまうダメな癖がある(そんなんでいいのか、元勇者)。
ここでも、薫は、黙ってしまった。
ユイと無言の時間が過ぎる。
薫は、無言の時間が過ぎるのが居心地が悪くなった。
そこで意を決して、
「すみません。どのタイミングで使い魔として契約したのか忘れてしまいまして」
と、薫は申し訳なさそうに聞いた。しかも、申し訳なさを表現するために、右手を頭の上に乗せた。
薫は、さすが元勇者、勇気をだして聞いたぜと思いながら聞いた。
が、ユイからの回答は、薫の努力を打ち砕く内容だった。
「いいえ、まだ契約をしていませんが……」
「えっ」
薫は、さらにわからなくなった。
使い魔って、主人が召喚して、使い魔契約を結ぶものだろう。
だが、ユイは契約をしていないと言っている。
なにがどうなっている?わけがわからない。
もういいや、聞きたいことを聞いちゃえっと、薫はユイにやや乱暴気味に、ぶっきらぼうに、
「いったいどういう意味かわからないので順序良く教えていただけませんか?」
と聞いた。
薫は、 魔物をたおし、防御壁で魔法を使い続けていて、ヘトヘトになってきているのだ。
「すみません。
ちゃんと説明せずに混乱させることを言ってしまって。
私は、天界の魔界管理課から派遣された天使になります。
薫様が魔王をたおしたあと、魔王のいない魔界は混乱状態になっているのです。
そこで、薫様に魔界の王になっていただくために、私がきたのです。
私は、薫様の使い魔として、魔界統一の手伝いをするのです」
「元勇者が、魔界の王に?」
薫は、ますます混乱してきた。
「そうです。
薫様は、魔王討伐後、恩賞を与えられる約束をしませんでしたか?
おそらくしたはずです。
そして、その恩賞が、魔界なのです。
ご存知の通り、昔から恩賞といえば、征服した領地です。
今回の場合、魔界になります」
薫は、驚いた。
だが、言っていることは筋が通っている。
薫を 散々利用し、最後は犯罪者の濡れ衣を着せた人間界の王達の顔を思い浮かべ、目をつぶった。
すると、 悔しさで、涙が出てきそうになる。
薫しか知らない屈辱。
自然と怒りで肩が震えそうになってくる。
そして、薫はユイに確認するように聞く。
「ユイ、教えてほしい。
魔界の王になったら、人間界を攻めることは可能か?」
「もちろんです。
魔王は、魔界の平和を維持するために、人間界に攻めることもありましょう」
ユイは「なぜ?」と聞かなかった。
天使なら、魔界が人間界に手出しをするのを、普通は嫌がりそうなものである。
正直言って、怪しい話だ。
だが、天界を利用して、魔王になって、人間界に復習してやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます