魔王をたおした真面目な勇者は、グレました‼︎
★634
第1話元勇者とユイの出会い。
魔界の片隅。
元勇者である薫は昼食を食べていた。
昼食と言っても、薫はさっきまで寝てたから朝食みたいなものだった。
勇者だった頃は、ちゃんと朝は起きていたにもかかわらず今はもう生活習慣が崩れてしまっている。
薫は、何か飛んでくるのを察知した。
堕落した勇者であってもかつて磨き上げた感覚を失っているわけではない。
飛んでくるのは天使なのだろうか?
背中に白い羽がある。
服は破れているところがあり、傷がある。
魔界に天使がなぜいるのだろうか?
薫は疑問に思いながら、関係ないと思った。
なぜなら、『もう、勇者じゃないんだから』。
そんな風に考え昼食を再開させた。
しかし、天使は、薫のとこにやってきた。弱々しく、ふらふらしながら。
「私は、天使のユイと申します。
モンスターから追われているのです。
助けて下さい」
と、天使の姿をした少女は、瞳を潤ませながら言ったのであった。
元勇者である薫は、昔だったら怪我を魔法で治し、モンスターをたおす場面なんだろうなぁ〜なんて思いながら、
「申し訳ないが、できない」
と答えたのであった。
薫は答えてから、失敗したと思った。
『できない』と答えたからではない。
『申し訳ない』とつけてしまったことだ。
別に、もう勇者じゃないんだから、助ける必要なんかないんだし、グレるって決めたんだからもっと乱暴な表現をしてもよかったんじゃないかと後悔した。
しかし、ユイはビックリした表情をしていた。
「どうして助けていただけないのでしょうか?
聖剣の波動をあなたから感じています。聖剣を持っているのは、天界に関係のある方のはず。
なら、困っている天使を助けるべきではなでしょうか?」
(はい、でました。天使である自分を助けるべきって言う自分勝手理論。俺はそういう奴らに利用されて裏切られた。だから助けたくはない。しかし、近づいてくるモンスターは弱い。どうせ暇だし、この天使を遊んでやろう)
そう考えて薫は、勇者の顔をした。 さすがは元勇者だけあって、凛々しく感じる。
「すみません。
魔界で天使に出会うとは思ってもいなかったので、魔物が化けている可能性を考慮して先ほどのような言葉を言ってしまいました。
いかがされたのですか?
あと、できれば天使と証明できるものはありますか?」
「あっ、いえ、そうですよね。
実は、ある用事があって魔界に来たのですが、モンスターに見つかってしまって襲われてしまったのです。
天使と証明できるものはすみませんがありません……。
ですが、信じて欲しいです。
助けていただいたら、ささやかなお礼をさせていただきます」
「ささやかなお礼といいますと?」
薫は、勇者の時にお礼の内容なんて聞かなかったなっけど、もう勇者じゃないから問題ない思った。
「今は、緊急事態なので用意はしておりませんが、できるかぎりのことをさせていただきます」
ユイは、そういいながら薫の手を握ってきた。
柔らかい。
これが女性の手か。
よく見るとこの天使はとても可愛い。
勇者の頃は、欲望をすべて抑えてきた。
勇者をやってた時は、天使を性の対象として見たことはなかった。
が、今は関係ない。
お礼にエッチな要求をしてもオッケーだよな?
どうやって表現しよう。
今まで言ったことがないから表現できない。
ええい。そのまま言っちゃえ。
「お礼に、ユイが欲しい」
なんだか、結婚の申込みみたいになってしまったが、まあいい。
あとは、回答を待つだけだ。
ユイの反応は、物凄く顔を赤らめながら、短く、
「はい」
というものだった。
回答を聞き終わったころようやくユイを追いかけてきたモンスターがきた。
また、モンスターは、ベタなセリフを言い出す。
「そこの天使をよこせ。
そうすれば、命だけは取らないでやる」
そして、薫もベタなセリフで言い返す。
「この天使は俺のもんだ」
言った瞬間、モンスターは薫の聖剣によって、一刀両断されていた。
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