第52話 無毒アレルギー

 人間の抗体を共有し、巨大な人工臓器として各人間を無線の神経でつなぐようになった。これであらゆる病原体に対して即座に新たな抗体物質を自然発生させることができるようになった。

 この自然生成の抗体のいい所は耐性菌の発生が少ない所だ。細菌をオブラートで包んで無毒化して、極力細菌を攻撃せず共生できるようにすることによってほぼ細菌を刺激せずに無毒化することができるのだ。

 この進化系として最近ではなく人間細胞の脆弱性のある部分を防御効果のあるオブラートに包んで細菌と共生する技術も研究されていた。


 やがてこの地球上、いや、他の星の成分まで予測した人間の体組織を害する可能性のある成分がほぼ解析され、それに対する人間の加工技術も確立された。

 しかし、やがて人類は謎のアレルギーに苦しむことになった。

 人間は「その生命の営みの中で微細なブレ、揺れの部分がないと未知の脅威に対抗できない」という遺伝子上の、ある意味神の意志のような察知器官があったようで、全く瑕疵、欠損のない人間が出来たということが無線の神経回路で各人間の細胞が共有されてしまったようで、人間の体が自らを傷つけて破壊し、人間の多様性を担保するという非常電源のような反応が出たらしい。


 人間たちは健康な自分や他人の体にアレルギー反応が起こるようになったのだが、というより、健康で傷一つないからこそアレルギー的な反応が出ていることが分かったのだが、これに対処するために人間たちは神経の接続を切って他人を接することにした。

 この方法で徐々に環境による成長や他人の差異による体組織の微細な変化をつけて非常電源が発現しないようにトレーニングをし始めた。これにより病原菌による死亡例もまた出るようになったが、微細な差異のお陰で、その特定の病原菌に無駄に強い人間も徐々に発生するようになり、そのおかげで人間はまだ続いている。


 最後に面白いことが分かった。人間が全員繋がっていた時のアレルギーによる致死率より今の病原菌感染による死亡率の方が低いということだ。

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