第37話 深夜に集まる老人たちの秘密の会話 8月29日

老人が夜早く寝て朝早く起きてるだって?

ほんとにそう思っているのかい?


ある深夜、老人たちが集まってきた。

ここは町内会館。

夜は目も見えづらいのにどうやって来たのか。


集まった老人たちは昔話に花を咲かせる。

しかしここで話されているのは、本当に正確で細密な記憶だった。

そしてその精度は毎夜詳しくなっていくという。


そしてその記憶で老人たちはもう一度人生をトレースして

 生きる楽しみを保っているのだ。


・・・・・


これはある結社の資料である


老人たちは過去の記憶のまま動かす。

鍵などの記憶、通いなれた道の記憶は他の記憶より強い。

最期にしたいことで通いなれた道を歩きたいという希望が出されるのはそのためだ。

もちろん家の建て替えが最近あったとかなどの理由で、その記憶が

 役立たずに来れない人もいたが、かなりの数が集まれる。


本人の糸で出せなくなった記憶を一度外部に出して再投影する技術で老人たちに

 もう一度”あのころ”の記憶を初めてのように再体験させられるかもしれない。

そのために実権をこれから数か所で行う。


その日。

あの実験中、排除したはずのせん妄患者によって事故が起こった。

噛み合わない記憶は暴走し始めた。

そして老人たちは他人の記憶と混ざり、元居た家ではない家へ朝帰りした。

家族は地方になった近所の老人が来たと最初は思った。

しかし、言動、記憶、癖や言葉遣い、すべてが元居たおじいちゃのばあちゃん

 なのだ。

町内は混乱した。


ほんとのおじいちゃんおばあちゃんを連れ戻しても、生活習慣や言動が

 かみ合わずにストレスになるのだ。

仕方なく、今いるおじいちゃんおばあちゃんを親族と考えるようになった。


そして月日がたち、今いる方が本物なんじゃないかと思い始めた。

最初はこわごわお客さん扱いしていたが、今ではダメなことはダメだと

 ちゃんと接するようになった。

これで町内は落ち着いた。


そろそろシャッフルし時だな。

ある結社の構成員は会議に向かう。

”老人をなおなりにしない結社会議”に。


END

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