第36話 うちの町内にあるずっと干したままの洗濯物 8月28日

ずっと気になっている家がある。

洗濯物を干しっぱなしにしている家だ。

何度も通っていると分かるのだが、完全に干したままにした時の洗濯物

 という感じでもなかった。

むしろ新品とさえ見えるほどだった。

もしかしたら同じ服が好きで、とも思ったが、それでも夜もずっと干しっぱなし

 というのはおかしかった。

たしかに昼も夜も洗濯している家もあるだろう、しかしそれにしては干している量が

 2,3人家族程度の量なのだ。

しかもこの家から誰か出入りしている人も見かけたことはないし、出前やヘルパー

 など、誰かが出入りしている感じもないのだ。


そこで興味を持った大学生3人組が遊びで24時間観察することにした。

3日くらい見張っても出てこないときは呼び鈴を鳴らすことも考えているそうだ。


・・・・・


大学生たち3人組は3日間交代で見張っていたけど誰も出てこなかった。

しびれを切らして中を覗いてみた。

するとかなりの人数の同じ服を着た人間が中で生活していた。

しかも料理などもかなり凝ったものが作られていて、外から見た印象とは全く

 別の世界があった。


そこで3人組は同じ服を買い、潜入してみることにした。

食料と変えの服、その他何日間か自分たちで暮らせる物資を隠し持って行った。

彼らに紛れて中の生活を調べるつもりだった。

しかし中はもぬけの殻だった。

そして調査中3人組の一人がいなくなっているのに気付いた。


2人はその一人を探した。

しかしいなかった。

慌てて外に出るとそのいなくなった一人がいた。

聞くと、意識を失って、起きたらここにいたらしい。

それによって安堵し、また怖くなり3人組は帰った。


その日、実はもう一人観察していた人がいた。


観察していた大学生は、観察中に中の人に見つかり脅されていた。

3人とも嘘をつくしかなかった。

いや、正確には2人が脅されていた。

気を失った一人はもともとその家の住人だったのだ。

おそらく各大学や学校にはその家の関係者が紛れ込んでいて

 こういう興味本位で観察しようとするうわさを聞くと、仲間に入って

 住人たちに情報を流すのだ。


そして観察中は実は食料を渡したり変えの服を渡したりした。

その物資補給の合図があの洗濯物であり、その契約を果たしたという意味で

 最後に服を干す形で中の住人に確認を促すものだった。


2人はその一人が仲間だと最後まで信じていて、脅されていたかは怖くて聞けない

 ものの、最後の半誘拐で最後通牒だと思ったようだ。

逆に言えばもう解放されたと思ったかもしれない。

それはまた別の大学の学生が数人、なぜかいつも空いているその家がよく見える

 部屋に観察しに来ているのが見えたからだ。


さて、俺の仲間に指示を送らなければ・・・。

あの部屋から俺のところに指示を乞う合図が送られてきた。


END

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