第28話 鮭缶を買い占めて遺伝子検査をして元の個体に戻せるかの実験 8月17日
なんか世界に1匹だけの特殊な神経細胞を持つ鮭を缶詰にしちゃったんだって。
でもその神経細胞は特殊で、背骨を通して1つだけ長いのが入ってるんだって、
だから1匹分必要らしいんだ。
そしてそのサケは特徴が少なく、遺伝子検査をしないと元の姿に統合できない
んだって。
その神経細胞から解析される遺伝子は特殊な病気にも効く可能性があるし、
生体兵器にも使えるんだってさ。みんな探しちゃうよね。
という事でこの国でも軍を総動員して探し始めた。
国内にある鮭缶を他国に取られてはなるまいと、まず鮭缶の回収を始めた。
とはいえ人海戦術も限界があるので各商店に報告義務を設けてそれを回収する
形式にした。
しかし、高額で転売できると踏んで、命令に従わずにネットに流す人も多かった。
そして他国からのスパイも大量に入ってきた。
各所で小競り合いのようなものが起きて一時期コンビニやスーパーは
「鮭缶ありません」の張り紙をするほどだった。
しかし、何か月かして、結局のところ鮭缶はほとんど集まらなかった。
そしてそれはすべての国で同じだった。
もちろんそういう情報を流しても、関係ないだろうと食べられてしまった可能性も
あるし、あえてそんな特別な鮭を見て(一応腹身の所に黄金の斑点がある)
どんな味がするだろうと食べた人もいるだろう。
ただもうすべての機関に1つも入ってこなかった。
ところがある日、座礁した船から、その鮭缶と思われるものが引き上げられた。
各国の研究機関は仕方なく共同でその鮭缶を開け始めた。
しかしその座礁した船には何でこんなに鮭缶があるのだろうというくらい
数がたくさんあった。
ロット番号から絶対にあるという確信はあるのだが、製造が途上国だったので
ロットの管理もそこまで細かくはなく、特定は難しく、結局全部開けることに
なっていた上に、素人では見落とす可能性があるので、ある意味権威のある者
だけが1つ1つ丁寧に開けて確認していた。
もちろん、相互に不審なことをしていないか監視することでも意味があった。
そしてやっと鮭缶の中身は1つの形に還った。
しかし肝心の神経細胞はなかった。
みんな大慌てでもう一度缶の中にそれがないか探し、さらに下水まで調査した。
しかしないものはなかった。
その日、もうその話題も無くなった頃、その缶詰を作った工場が不景気により
倒産した。
そしてその資料室 「寄生虫・アニサキスの亜種?」 と書かれたホルマリン
漬けになった神経細胞が見つかった。
END
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