第26話 地球上に毛が生えてきた 8月14日

地球に毛が生えてきた。

毛はどんどん侵食していき、ついには世界中を覆った。


草なら除草剤で何とかなる。

でも星レベルの体毛はよほどのことをしないと刈り取れないし、

 根を腐らせてもまた毛根ができてしまう。

段々地球の体毛がさらに太く濃くなっていき・・・。


地球の体毛は重機でも叶わないほど濃くなっていた。

かろうじて幹線道路は総力を挙げて確保していたが、他は

 もうダメだった。

食料は確保できなくなったのだが、幸いに地球に毛が生えてきたと同時に

 地球に血管のようなものができてきて、その成分が人間の栄養分となることが

 分かった。

その地球の血液はかなり清潔で、栄養分のわりに微生物などが極端に少なく、

 そのまま摂取しても平気だった。

そこで各家庭では勝手に地球の血液?を採取してエネルギーを補給するように

 なった。


地球の血液?をみんなが組むことで何かいいことでも悪い事でも起きるかと

 思われたが、そういう兆候はなかった。

いい方で言えば毛が枯れて前の地球に戻ることだったし、悪い方で言えば

 毛は枯れても植物が育たなくなるなどだろう。

しかしそういうことも起きなかったので、人類はそのまま吸血生物のように

 暮らしていくこととなった。


そうしているうちにある奇病がはやり始めた。

ある日、体に斑点が出てきて、それが体中に広まり、やがて体中に突起物が

 生えてくることだった。

それでも生活に支障はなく、数十年は特に問題にもならなかった。


ところがある時期を境にその変異した人間にさらなる症状が出始めた。

斑点のあたりから出た突起物が成長し始めたのだ。

よくよく調べると体から生えてきたものは木だった。

人間はそれでも命どころか日常生活に支障をきたすこともなかった。


しかし、そのまた数十年後問題が起きた。

ある時点から連絡が取れなくなる場所が出てきた。

レンジャー隊員などが決死でその場所に行くと、その一帯には毛がなく

 樹木で生い茂っていたのだ。

そして樹木の樹皮の一部に人間が来ていたであろう布の破片がめり込んでいた。

おそらく、人間が樹木に変わったのだろうと推測された。


こうして地球の体毛は人間の木に置き換えられていった。

地球が緑の星に還っていく・・・。


ある日、かろうじて生き残った人間が元に戻った地球を調査していた。

すると超古代文明の文献が見つかり、今回の事件に酷似した現象が書かれていた。


【地球は自分にとってのノイズ、または刺激が増えてくると自浄作用、または防衛

 反応でそれらを繊毛運動で排除するシステムが働く、そうなると自然という地球の

 寄生虫はそれまで育ててきた生物に自分たちの胞子を植え付け、発芽させる。

 そうなると動物は植物化して地球に値を無理やり張っていくことになる。

 その動物由来の新植物は遺伝子には地球の体質にとって過剰反応させて、

 そのシステムを枯れさせるような物質を出すことになる。そうなると

 地球はまたおとなしく寄生虫(植物)の天下を許すのだ。そして、それに

 気づいた我々の文明はその胞子を人間以外の動物に定期的に発芽させ、地球が

 暴走しないように監視していた。ところがある時から地球も対策をしてきた。

 地球の表面に血管のようなものを作り、そこに胞子を殺すような成分を流した

 のだ。それは巧妙で、人間などの動物には栄養として働く。簡単に言えば

 鳥や虫に対する果物で、そのフェロモン、におい、味、栄養は動物たちには抗う

 ことのできない魅力的なものだった。それは植物にとっては裏切りのような

 もので、動物たちが地球の体毛の中でノミや蚊のように生きながらえて植物の

 いらない世界を作ったのだ。しかし植物もまた狡猾だった。その地球の体液の

 中に自分たちの胞子の遺伝子を詰め込んだ小体を紛れ込ませたのだ。それに

 よってまた植物たちは勢いを取り戻すだろう。我々はその罠にはまって

 しまった。幸い少数の人間はそれに対する抗体を持っていたようだ。私も植物に

 なってきている。願わくば私たちの未来に、または希望に私の植物化するのを

 一定確率で防ぐ抗体の入った実(遺伝子)を受け継がせたい・・・。】


そしてその文献の傍らにはアメーバのようなものがあり、その大きな単細胞の中に

 遺伝子が入っていた。


政府は直ちに有能な人類に限り秘密裏にその遺伝子を接種させた。

こうして地球の、何度目かの動植物に対する脅威は・・・、去った。


END

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