第25話 2階から毒薬 8月13日

下の階がうるさいから、上の階から薬を染みこませて嫌がらせしてみる。

ちなみに私はその薬は効かない。


私はトカゲだ。

下に住んでいるハチがうるさくてかなわん、いつも羽音を立てていてこちらが

 夜行性なのに昼間っから仕事していて騒々しかった。

ちょっと不眠症気味になってきたので文句言いにはいきたかったが、あいつらが

 正直怖かった。

静かにしてくれと言いに行っても、下手したら刺されて命の危険すら出てしまう。

仕方ないので我々爬虫類には効かないが、昆虫には効くという殺虫剤を手に入れ

 それをちょっとづつ下の階にしみ込んでいくように撒いてみた。

数日すると下の階があからさまに静かになってきた。

命まで取ることは躊躇われたので、そこで殺虫剤を投与するのをやめた。


その日から数週間、下からの羽音が聞こえなくなった。

さすがに罪悪感と多少の好奇心から下の階に行くとハチたちが大量に落ちていた。

もうなくなってから結構経っているようで、一部はカビの餌になっている者もいた。

少しかわいそうだとは思ったが、他にどうすることもできない、と自分に言い

 聞かせて、一応お墓のつもりで一か所に彼らを集めて土をもってきてかけて

 やった。

手を合わせ、あいつらの仕事場だったタンポポの花も採ってきて手向けた。

一所懸命に弔うと、少し救われたような気がしたので自分の住処に帰ることにした。


それ以来何気なく過ごしていたのだが。。。


その日、私はちょっとした体の不調を感じ、医者に行った。

検査をした結果どうやら寄生虫がいるらしい。

どこで感染したのか不思議だったが、どうやらハチの体から出た寄生虫が

 私の体に入ってきていたらしい。

この寄生虫は昆虫や爬虫類によくいる寄生虫ではあるが、一生付き合って

 いかなければならない、薬の効かないタイプらしい。

あいつらの最後の抵抗?土産をもらってしまった。

見に行かなければよかった、と思う。


END

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