第22話 表現規制と戦うネット殴られ屋 8月8日

配信サイトではじめた罵詈雑言を浴びて投げ銭をもらう商売。

しかし表現規制が厳しくなり・・・。


このストレス社会、俺はネットで罵詈雑言を浴びせてストレス発散をしてもらう

 ネット殴られ屋を始めた。

最初は有名人でもない自分をいくら叩いても何の発散にもならないと思われたけど

 そこそこ好奇心で人が集まり始めたころから、こいつ儲かってるんじゃないかとか

 下らないことで目立って人集めしてるとか、それこそ叩かれだした。

そこで本を出版したり、有名人とコラボしてとにかく文句を言いやすいように

 目立つことをした。

でも結局は勝手な妄想を沢山の人でコメントして盛り上がることが人気になる

 秘訣だった。

「おまえ未成年者略取で逮捕されたから分かるよな」とか「童貞が何言ってんの」

 とか、とにかく大喜利みたいな妄想をコメントされて生主として困ることが

 一番の自分のストロングポイントだった。

それが分かると割と商売の軌道に乗るのが早く、割と生きていくだけのお金が稼げる

 ようになった。

まあ炎上商売の方が早いんだろうけど、それには何か、例えば自作PCが作れるとか

 要するにそこそこ知識があってあった上で、その知識に隙もあるとかレベル

 じゃないと見られないし、他人をたたいたり不法行為して炎上するやり方も

 配信サイトやSNSサイトの規約が変わったら一発で失業する可能性もある。

小心者の自分はだから今のやり方がいいんだと確信している。

小心者特有のリアクションが生放送で受けてるのも自分にとっては好都合だった。


しかしついに配信サイトの方でも視聴者、コメントの規制が厳しくなるという話が

 出てきた。

一生懸命絵を描いているけど絵がまだ未熟な配信者がいて、視聴者たちがちょっと

 からかっただけで激怒して訴えたらしい。

自分の芸術性がわからないなんておかしい、これから有名になるのに今出る杭を

 たたいて俺のやる気をそぐのは偉大な芸術家の卵に失礼だと。

まあその程度なら運営も動かなかっただろうけど、最近起きた配信者の自殺なども

 契機になったらしい。

自殺者が出たことは隠してはいたのだが、その自称芸術家がそれを持ち出して

 訴えたらしいのだ。

仕方なく配信サイトの運営も配慮してます的な対処を迫られた。


実は小さい配信サイトではあるけど、一応自分は大手なので、コメントの取捨選択の

 AIのデータベースのアドバイスを求められた。

そこで見たNG候補はかなり自分にとっては商売あがったりの言葉が並んでいた。

俺は正直言ってこの候補は全部却下したかったが、他の配信者のことを考えると

 完全に却下するのも躊躇われた。


そこで俺は提案したのは、前後のつながりのサンプルの量を選べるという案だった。

つまり、例えば某サイトでは「サブタイトル」という言葉は途中に「ブタ」が

 入るので「サブ/タイトル」と入力しないといけないが、そういう単語の候補を

 たくさん作って、単純に性的な言葉、罵倒語を全部禁止にするか、動作が重く

 なっても候補を広範囲の分析で判断するか、俺のように何でもOKとするように

 頼んでみた。

配信サイトの技術者はあからさまに面倒そうな顔をしたが、一応検討してみると

 言って帰っていった。


数週間後、規約の変更後、結局危ない言葉はすべてNGとなってしまった。

しかも、スラッシュなどで区切ったり数字やカタカナで表現したものまでNG

 判断されてしまうようになった。

当然自分の配信に来る人はほぼNGとしてコメントBANされ、コメントがない状態に

 なってしまった。

俺は当然抗議したのだけど、一人のために特別な対応はできないと却下された。


そして数日後。

その日、俺はネット殴られ屋で繁盛していた。

チャットだけは別のサイトで、そこに棒読みをつけて、それを配信に載せることで

 解決したのだ。


END

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