第21話 ショートカット 8月7日
全てをショートカットして生きる人の末路。
バイトの帰りに不審な人を見た。
ほとんど人の通らない私有地を周りを気にしながら歩いていた。
泥棒かと思って通報しようかと思ってよくその人を見ようと近づくと
私有地からまた道路に出た。
まあよくある勝手に近道を行く人かと思ってまた見ていると、今度は
駐車場を突き抜けていった。
そこまでして早く帰りたいかと思って、ちょっとの好奇心でその男に
ついて行ってどこまで近道するか見ようと思った。
しかし次の瞬間、入っていったのは巨大な邸宅だった。
まさか勝手に敷地内に入るわけないと思っていたけど、ちゃんとカギを使って
入っていた。
要するにこの男の家なのだ。
私が驚いて立ち止まってるのを見て、近所の人らしき人が声をかけてきた。
「ああ、あの人変わってるでしょ、でもどっかの会社の大株主らしいんですよ、
だからこんな大邸宅に住めるんでしょうね」
その日はそれで帰ったけどどうにもあの人が気になった。
昼休みに後輩にその話をしたらなんとその人の元同僚だった。
何でもその人は強引に手柄を出して出生して、そのあと強引に転職、
そこでも強引に立場を上げていき、お金をため、株などで儲けて
今の地位になったそうだ。
今は個人で買収した会社の社長になっているらしい。
後輩の同僚という事で聞いてみたら私よりかなり若いようだった。
それでちょっとやっかみも含めてその人を調べてみることにした。
私的に付き合っている興信所の人に頼んだ。
ちょうど私の仕事は在宅でできることもあり、時間調整も多少はできる。
興信所の人と行動を共にして調べることもできた
そこで調べていくといろいろな彼の時短方法が見えてきた。
私生活ではとにかく最初に物をそろえて、買い足しなどがないように生活していた。
もし持っていない急に必要になったものなどは、親戚の人の家に勝手にあがって、
必要なだけ使い、礼も言わず帰るなどのこともしていた。
食事は移動中に食べ、風呂も出先などで拝借し、とにかくどこかに寄るという事は
まずなかった。
そうしているうちに食事も1日分のサプリになり、風呂に至っては着替えるときに
濡れタオルで拭いて済ますようになった。
やがて貯金も十分になったのか株を売り払って、そのお金でPCの前で
余生を過ごす支度を始めた。
1日のほとんどをPCの前で過ごし、ほとんどの物事はメイドにやらせ、
自分はPCの前で遺書かもしくは自伝のようなものを書き始めた。
そしてその日
自分の貯金が今のままでは数十年も尽きないと知った彼は、何年振りかに外に出て
銀行へ行った。
行員の止めるのも聞かずに全額をおろし、そのお金とともに自宅ごと焼身自殺を
した。
そして唯一焼け残った金庫には自伝があった。
その自伝は全く別の人生が書かれていた。
最期にある遺書には別の名前があった。
おそらくもう彼の頭の中では来世での死までショートカットするプランが
できていたのではないかと私は思った。
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