第9話 時空売ります

あの頃の時間、凍らせて今のあなたの元へお届け


「なんだこれ」


あの頃の時間


俺には過去に不思議な体験が何回もあった

それは子供のころのあいまいな記憶として、勘違いで片づけてきた


でも・・・


記憶・・・


子供の頃、その頃のことで思い出せない時間がある

いや、違和感といってもいい


例えば簡単なことでいえば、一番楽しかったゲームのエンディングが思い出せない


一緒に遊んでた友達がいなくなってた

次の日そのことを友達に聞いても、遊んでなかったよ、って返された

遊んでなかったと思うことにしてたけど、もしかしたら違っていたのかも


でも・・・


俺は試しにその時を補完できるかそのサイトにメールしてみた


返信はすぐに来た

確保できています、すぐに再生しますか?


・・・・


なるほど


俺は断った


なせかって?

こいつらは過去の時間を勝手に凍らせて、人質にして売りつけてるんだ


なぜわかるかって?

あの頃の友達は今俺の妻で、同じ内容のメールが来たから

それで時間をずらして時空を注文したら、拒否されたから


そんなものくらい今の二人の時間があればいらない



・・・いや、試しにゲームのエンディングだけ頼んでみるか


それでしたら3800円になります


俺はそれを承諾した


・・・・子供のころの風景がよみがえってきた

隣に今の妻もいる

悔しいけどとても輝いた時間だ


・・・

その時空の再生が終わった


・・・

俺は悔しいけどたまに利用する

24時間輝いていた子供のころ、ちょっと今つまみ食いしてもいいじゃないか

こんな世知辛い大人になったんだから

なんならもっと時間を凍らせてくれればいいのにとも思うようになっている


しかしこの時空を確保する作業はその時じゃないとだめらしい

なるほどと思った

すでにそういうエージェントがいたのか



しかしどこにいたんだ


・・・

嫌な予感はしたけど、今の生活は捨てられない


いつか聞いてみることにしよう


二人が老人になって

もう大丈夫と思ったときに

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